コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ8-8

「……」開いた口、樽前は塞ぐことを忘れて、まるで死を悟った様相に見える。しかし、ぶるぶるっと首を振って、意識を戻した。それからは、瞬きを繰り返しては、こちらになにか言いかけようとして、つぐみ、またその動作の反復。店主は、ズボンのポケットを探って煙草がないこと気付き、席を立つと、二人の人物に対峙した。

 さきほどのベルは従業員でなかった。

「お取り込み中のところ申し訳ありません」種田という女性の刑事がわずかに頭を下げた、隣の男性刑事は愛想良く顔の皺を作る。僕はホールの段差を降りて、通路へ。男性の名前はたしか魚の名前だったと記憶するが、定かではない。

「勘違いをされている」

「は?」

「営業時間外に足を運べば、話を聞く時間を設けてくれると思い込んでいるみたいですけれど、間違いですよ」

「五分で済みます」種田は引き下がらない、権力をうっすら彼女は強引に掲げる。

「言葉が通じないようですね」

「いいえ。手間は取らせません」

「引き下がる選択は考えていますか?」僕はきいた。

「限りなく低いパーセンテージでは」

 あからさまにため息をついた。「……煙草を吸います。これから、その時間内にという約束を交わしてもらいます、断るなら……」

「結構です」間髪いれずに種田が力強く答えた。それにしても表情の乏しい顔である。

「では、そちらへ」

 二人をテーブルに促して、店主はロッカーに戻る。上着を探り煙草とライターを手に取る。歩きながら一本に火をつけた。

 避けても避けても侵害を止めない。

 本日の食材とリンクする。笹の子が思い浮かんだ。煙を吐く、通路、シミと床の軋み。ホールへのステップを上がる。考え込む一名と食事を待つ二匹の子猫のまなざし。用意周到、男の刑事、スズキだ、思い出した、彼はノートPCをスタンバイ。