「結局、警察の訪問で店長はあんまり仕事にならなかったんですもんね?」
「ある程度の拘束は受けた」
「少し気にかかりますんねえ」
「なにが?」店主がきいた。菜ばしで衣に包まれ細長い形状はとどめる笹の子をひっくり返す、大粒だった気泡が細かく変化。
「ちょっと読み上げますね」彼女はカウンターに回る。
「おいおい、仕事中だぞ」
「先輩だって、ロッカーで気になるって私に言ってたじゃないですか、手遅れですよ」
「そうじゃない。店長の手前だっていうことだよ」
「仕事に差し障りがあるようだったら、僕は止めてる。読み上げるのはたった数分、もやもやとした気分で仕事をされれば、提供する料理に影響がでる」
「ほら」と、小川。
「取り合わずにランチの仕込みに没頭する姿勢が僕は理想的に思うよ」
「ほら」と、館山。
見合った二人が互いの至らない点を認め合う、彼女たちの交戦というのはすぐに氷解してしまう、女性同士では珍しい光景といえる。さらに小川は気分の切り替えが館山より早く、店主にコピー用紙をぴらぴらと見せ付けた。
「どうぞ」僕は、半身になって、話題の中心をいっそのこと処理してしまおうと、許可を下した。当然、不本意であはある。
「ではでは、僭越ながら私めが、えー、読ませていただきますで、ございます」
「さっさと読め」
温度を下げる、次の一陣、衣をまとう笹の子を流しいれた。パチパチ、一度目に比べて細かな泡立ちが早く訪れる、これは目が離せない、店主は音の変化にも引き上げるタイミング、その見極めるを委ねた。油の奏でる破裂音をバックグラウンドミュージックに仕立てあげ、左後方の女性の音声を店主は脳内でひと括りにまとめた。