「まず初めにこれは不完全な見解であることを確認します。よろしいですね、また、見解をともに捜査を進めたとして、その責務を私は一切関知しないことも、続けてご理解ただくことを重ねて肝に銘じてください。煙草を吸います。さて、前回、女性がおっしゃった前文を踏まえ、私の意見と共通認識である、この事件は事件そのものの公開が真相に行き着いてしまう、謎解きの要素は微塵も感じられない、これが妥当な意見です。あなた方が捜査の対象をはずされた周辺への聞き込みの禁止は、そのことを如実に表している。事件から遠ざけるのが目的でしょう、捜査に抜擢された理由を想像するほど私は材料を持ち合わせはいない、ですので、あなた方が各自の心当たりを探ってください。とても抽象的な話ばかりですが、仕方ありません。憶測で話しているのです。しかし、わかりやすさも時には必要ですから、そちらの要望にも応えるとしましょう。死亡時刻は午後九時前後、現場はブルー・ウィステリアの屋上、被害者の身元は不明で、性別は男性。所持品はなし。発見は翌日の午前中。新商品の発売に並ぶ行列が埋め尽くす店先。第一発見者が屋上に上がった経緯は、不明。業務上の一貫だった、ということですか。ふーん。梯子を建物の裏手に用意しておいた、それは野ざらしで置いていたのでしょうか。なるほど、聞き取り調査はもう止められたのですか……。それでは、新たに得られた情報があれば、公開を。……通信会社の支店長が行方不明、こちらの事実確認は取られてないのですね？聞き込みに該当するので……、はあ、もう少し頭を柔らかく、発想豊かに考えるべきです。お二人は刑事である前に市民である。ちょうど新商品の端末を身につける対象の年代では？はい、ご理解いただけたようで。他の情報は、なるほど、そうですか。こちらは現場の状況を克明に言い表している。つまり、飛行船が現場の建物の上空に現れ、停電によって照明が落ちた、そして現場の建物だけは早急に予備電源が起動し、行列が歓声をあげた、加えて屋上に光りを見たと、ブルーの光が通りを挟んだレストランから見えた。つまり、その時点で被害者か、ブルー・ウィステリアの関係者、あるいはその他の配役が屋上に上がっていた可能性が浮上しますね。飛行船の操縦者は停電の時には上空にいたのですよね、明かりが消えて、予備電源が点くタイムラグに地上を確認するはずです、危険を認知していたのであれば。
