「携帯は持ってますか、警察を呼んでください」よく通る声、しゃがんでいるにしてはだ。また、綺麗に人ごみが直線所に私と声の主とを繋ぐ。周囲、取り巻き、野次馬たちは無能であるかのように、鈍感にこちらを覗き見た。しかしだ、美弥都は考えを訂正した。何らかの理由、要因が私に通話の可能性を求めたのかもしれない、わずかではある。
「どうかしましたか?」
「携帯の電波が通じないみたいで、かけてもらえませんか?」
二日ぶりに屋外で取り出した端末のディスプレイ、機種変更はこれまでのままで良かったが、先週、料金プランの改正が迫る旨のはがきが自宅に届き、急ぎ、販売店にて新しい機種に変更を余儀なくされたのだ。縦長の鏡を思わせる画面を見る、しかし電波状況は悪い。
数回のコール。
掛けるが繋がらない。
「繋がりません」音量を高めて、路上の人物に言った。相手は手を軽く上げて、対話を切り上げた、そのときに光を感知した、青か紫色に点滅が横たわる人物から直接発したかのように、それはうっすら光を帯びていた。
美弥都は解放された、と捉え、行動を再開した。関係のないこと、そこまで相手を気遣えるものか、私は正直だ。美弥都は光の遮られるビルとの間を通り、明るい通りに出た。
目的の店は斜め向かいに見つかり、無事頼まれた豆を共同の豆を使用する同業者に渡した。
まったく聞くつもりはなかった。多少関係性を持ったので、美弥都は周辺の異状について尋ねた。