コンテナガレージ

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 S市の中央区仲通りで起きた集団卒倒は、通信端末ブルー・ウィステリアの新製品が要因と特定された。体調不良を訴える患者は全国で八百万人を超え、発症予備軍は更に三百万人との推定が経済省の調べで発覚した。現行は製品の使用中止を訴え、先週までに耳鳴り、めまい、気絶等の発症者数は減少傾向にあり、今後も注意を呼びかけていく、とブルー・ウィステリア会長は会見で語った。<現地時間午後八時十二分>

 画面が切り替わった、台風の被害報告と再上陸の情報は見る価値もない。必要であればこちらから積極的に取得するのだ、店主は地下鉄の改札脇から足を踏み出した。数分ほど、いつもより滞在時間が長い。天気予報を見るつもりが、拡大鏡を用いた文字の大きさと錯覚してしまう画面の情報に運びを止めてしまったらしい、店主らしくない行動である。目的の天気、気温、湿度を取得したら、離れる算段が関わりの多かった事例に足を引っ張られた、弁解を述べると、このような言い方が望ましいか。とにかく、巻き込まれた事件の続報に足が止まった、ということだった。

 捨て去った蔑む俗っぽさの欠片を見つけしまった、店主はシャッターの下りた地下通路を約十メートル進み、前の通行人に続き、左に進路を取った。地上に出る急勾配の階段、その扉が開くのを待つ。女性はかなり力を込めて引っ張っていたが、開かない様子に僕は自分が通るために手を貸した、親切心と前の女性は受け取っただろうか、まあ気にかけても、高々数時間だ、明日になれば忘れる、それぐらいの出会いと感謝と出会いである。今日は一段と圧力差の引き込みが強い、ファーストタッチがこのドアを引きあけるには肝心なのだ、ぐっと勢い良く力を込めなくては、開かない。颯爽と片手で軽々となど都会の住人を装っていては、それこそスマートさを反対に失う羽目になる。もちろん、僕は立ち止まる速度を極力抑えたい、これが理由である。

 女性を先を譲り、後に続く、後続に人が待っていたので、その人にドアを開いたまま、バトンを繋ぐ。会釈をされた。たぶんこの人はドアの重さを日々感じ取る人物と店主は確証し、階段を上った。