コンテナガレージ

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本日はご来場、誠にありがとうございました5-3

「ですよね、店長は……、当然知らないですか、すいません、聞いた私が浅はかでした」

「ブルー・ウィステリアなら、昨日営業を再開したわよ」国見は話を聞いていたらしい。

「蘭さん、情報通。もしかして、店に足を運んだとか?」

「店長に渡した端末の代用品を探しにね」

「うーん、いつの間に。抜け駆けですよ」

「使えないものをもらって喜ぶ人はいないわ。それに、持ち歩くわずらわしさが腕輪の最大の売り、機能を果たせないとしたら他の機種に変えてもらう心理はむしろ、一般的な動機だよ。考えすぎてるのはどちらでしょうね」

「な、なーにを言ってるんですかね。私にはだれのことやら」

「機種変更は受け入れられました?」国見が訊いた、彼女はアンパンを一口だけかじる。甘いものが苦手という認識はなかったように思うが、認識の受け取り違いか……。

「いやね、結局お店には入れなかった。がんばって列に並んだんだけれど、出荷台数の多さから行列ができるのは覚悟の上だったんだけど、二十分で諦めました。すいません、店長」皆、謝ってばかりだ。国見は背中を向けて、そう言った。

「頼んだつもりはないから、いいよ別に」

「刑事さんもさっぱり来なくなりましたね」小川が口を尖らせて話した。「事件は、すると解決したっていう、解釈でいいだろうかしら?」

「無理にかしこまるなって」と館山。彼女は取り出したハンカチにパンを包んだ。持ち替えるらしい。

「屋上に残した犯人を特定する証拠品は、記憶を辿るとですよ、見つからなかった、そういってませんでしたか。あれっ?もしかして、私の勘違いですかね」

「いいや、痕跡は発見されていないよ」店主は応えた。

「じゃあ、別の方法から犯人を特定したんですねきっと」

「何で言い切れる?」