「ですよね、店長は……、当然知らないですか、すいません、聞いた私が浅はかでした」
「ブルー・ウィステリアなら、昨日営業を再開したわよ」国見は話を聞いていたらしい。
「蘭さん、情報通。もしかして、店に足を運んだとか?」
「店長に渡した端末の代用品を探しにね」
「うーん、いつの間に。抜け駆けですよ」
「使えないものをもらって喜ぶ人はいないわ。それに、持ち歩くわずらわしさが腕輪の最大の売り、機能を果たせないとしたら他の機種に変えてもらう心理はむしろ、一般的な動機だよ。考えすぎてるのはどちらでしょうね」
「な、なーにを言ってるんですかね。私にはだれのことやら」
「機種変更は受け入れられました?」国見が訊いた、彼女はアンパンを一口だけかじる。甘いものが苦手という認識はなかったように思うが、認識の受け取り違いか……。
「いやね、結局お店には入れなかった。がんばって列に並んだんだけれど、出荷台数の多さから行列ができるのは覚悟の上だったんだけど、二十分で諦めました。すいません、店長」皆、謝ってばかりだ。国見は背中を向けて、そう言った。
「頼んだつもりはないから、いいよ別に」
「刑事さんもさっぱり来なくなりましたね」小川が口を尖らせて話した。「事件は、すると解決したっていう、解釈でいいだろうかしら?」
「無理にかしこまるなって」と館山。彼女は取り出したハンカチにパンを包んだ。持ち替えるらしい。
「屋上に残した犯人を特定する証拠品は、記憶を辿るとですよ、見つからなかった、そういってませんでしたか。あれっ?もしかして、私の勘違いですかね」
「いいや、痕跡は発見されていないよ」店主は応えた。
「じゃあ、別の方法から犯人を特定したんですねきっと」
「何で言い切れる?」