コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって9-7

「はい」

「無事だったようね」数時間ぶりの再会?会ってないのだから、再会話とでも言おう。

「ええ、手荒なまねを受けました。あなたが出してくれたのですね」

「そういうことにしておいて。あまり電話では喋れないの」盗聴を警戒した発言、彼女の敵とは何者だろうか、僕は当てもなくアンテナを四方に向けた。

「飛行船場で何が起きたのかをこれから確かめます」

「お勧めはしない。いずれ知れることですし、あなたが足を運ぶ訪問先にあなたを見つけるや否や拘束に駆り立てる機能がインプットされた連中がひしめいてるわ。悪いことは言わない、自宅で静かに暮らしていて」

「あの家はいつまで借りられます?」

「気に入った?」

「地下のガレージを作業場に置き換える算段が頭から離れなくて、他の施設を見つけてもいいのですが、うん、気に入ったといえば、はいと答えるのが素直な回答でしょうか」

「ふふふ、素直な人は素直という言葉を避ける」

「回答は?」

「ええ、当分家主は戻りませんから、好きなだけ使うといいでしょう。何なら必要な機材を手配しましょうか?それとも……」

「自分で引き受けます。これまでと同様、これからも僕はひとりですから」

「約束を忘れずに。命絶つときは一方を入れて。この番号を覚えておいてください、それぐらいの記憶は世間に残して」

「最初と立場が反転しましたね」

「そちらが仕掛けたの、ああ、つい口が滑ったわ。ごめんなさい」まるで悪びれる様子がない彼女の口調だ。しかし、どこか微笑ましいとさえ感じ取れる。音声がたぶんに想像を膨らませた、補ったかつてない機能だ。すべてを見せてまう映像と音声は人の機能を鈍らせる、そこにあたかも他人が息を吸っているかのようであることが必ずしも、観測力の向上には繫がらない。

「……何のことですかね、僕にはさっぱり。いやあ、あの日の夜景は見事なきらめきでした」盗聴に気を使った。