コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

本日はご来場、誠にありがとうございました2-2

 幸い、開店間もない時間が功を奏したのかどうかは、正しい状況説明とはいえないけれど、ウエイトレスの特段に興味を湛えた視線、彼女の一人分の関心が留まったのだから、上出来だろう。正午過ぎのかきいれどきだったならば、目も当てられない、それこそこの端末の使用をやめるよう指摘を受けたかもしれないのだ。

 一分も経っていない。店のドアが開く。窓際の奥の席、ドアを入って、左側に僕が見えただろう。他のお客の出入りに気分が損なわれない、そのために入り口に背を向けて座っている。

「失礼します」

「どうも、朝から押しかけてしまって」二人の刑事は特徴的な表情をそれぞれ浮かべ、席に着いた。鈴木が手を上げて、コーヒーを注文した、グラスの水が置かれて、注文の受け付けが完了したように思えた。

「先々週、交差点を通りかかった動機をお聞かせください」種田は冷淡な顔つき、背筋を伸ばして前置きを取り払い、言葉を投げかけた。配慮に欠けたとは思わない、むしろ僕は無駄な礼節が取り除かれたので少し笑いそうになったぐらい。

「その道が恋しかったから」

「思慕の具体的な箇所を上げてもらえると、捜査に役立ちます」

「動機といえるかどうかは、さておき」店主は観察の片手間に口を開いた。多少なりとも向えに座る、仕事に熱心な女性が頼もしくもあり、どこかはかなげな様相を感じ取れた、疲れあるいは彼女が備える気配だろうか、店主は続ける。「改装に取り掛かる移転先のビルが目的地でした」

「いつもは休憩を取らないのがあなたの日常でしたが、事件の当日に足を向けた理由は?」

「さあ、覚えてはいるでしょうけど、思い出せませんね。また思い出す必要がない、と私自身が思っている間はいくら外部の働きかけが多感であっても、多分記憶は引き出せませんよ」