コンテナガレージ

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本日はご来場、誠にありがとうございました2-4

「私が吸います」店主が言った。種田を見つめる、この程度の譲歩は受け入れて欲しい、そう目に意思を込めた。

 ブラインドが下げられる。ウエイトレスが気を利かせたらしいが、僕はすぐに体をねじって、外が見える程度にブラインドの羽を調節してもらう。

 体に縞模様が浮かんだ。

 煙草を吸うつもりはなかった。立場の優位性を嫌ったのだ、ここは喫茶店で、相手は刑事、とはいえ僕の店ではない。よって、対等に接するための足場を作った、といえるか。自らの行動を振り返り、言葉に意味をつける店主。

 僕が吸い、鈴木が後を追う。種田はコーヒーを口に運んだ、カップ接触面積、その滞在時間は極端に少ない。猫舌だろうか、店主は何の気なしに彼女の動作を視界に収める。音楽が流れていたようだ、入ってきたときに流れていたかどうか、それすら意識に上がらない、少しばかり緊張感を纏っていた、またまた観測。

 種田が話し出した。「ブルー・ウィテリアの開発エンジニアが一人、新製品、あなたが腕に填めるそれを完成にこぎつけた直後の行動がすべての発端でした」

「発端?」僕はきいた。これから集団卒倒の説明はどこへ霧散したのか、質問は特異なこの空間を長引かせる、店主は素直に相手の話に耳を傾けた。

「上空でその価値を自らの目で記憶に収めたい、彼はレセプション、新製品発表の場、殺人事件が発生した日本第一号店を焦点を当て、開発を終えると飛行船のライセンス取得に乗り出しました。アメリカのライセンスは日本のライセンスと共用部分を有し、数科目の講習を受け、彼は試験に合格を果たす。開発製品に心血を注いだ世界中にユーザーを抱える企業の新製品、彼はそれらのリーダーを務めた、やるべき責務は果たしので、彼の行方を追うことは代表が禁じたそうです、ここは憶測で話しています。それから、彼は日本で偽名と、ある人物の住まいを借り受け、北海道飛行船協会の会長に成りすました。調べたところによると、全国の協会員は不可思議に会長と面識がなかったことが発覚しました。十年ほどの活動期間内に、飛行船協会に直接尋ねた協会員はゼロであったようです。事実かどうかは判断しかねます。ただ、事情を伺った限りに当人たちに嘘をつくメリットがあったかどうか、その点を考慮すると、はい、証言は正当性が高いと思われます。一方、事務担当の舞先という女性は数ヶ月前から働き始めた、飛行船の協会の事務募集の案内を見つけるまで、飛行船が飛んでいることすら知らなかった、と話しています。このような背景により、飛田と名乗る開発エンジニアは事件当日、まんまと飛行船を操縦します」

「話を腰を折って申し訳ありませんが」店主は煙を細く吐き出した。「飛行の事実を彼は否定した、あなた方がおっしゃった情報でした、私の記憶違いでしょうかね」