コンテナガレージ

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本日はご来場、誠にありがとうございました2-3

「店長さんが、その、なんといいますか」挨拶以後、種田との会話を見守る鈴木が言った。「集団卒倒の原因と、S市警察が疑いをかけてまして……」

「もう、屋上の死体の身元、犯人は捕まったのでしょうか?」店主は話題を変える、鈴木たちの質問に答える価値を見出せない、正面切った否定は種田という女性刑事の神経を逆なでするし、やんわりとした拒否は鈴木の余計な気遣いが始まる、聞いてはいるが返答を避ける、そのポーズで汲み取ってもらおう、僕は目を細めて視線を外に流した。

「私は集団卒倒の事情聴取に窺った、その点をお忘れなく」凄みを利かせた種田の目線だった。一度合わせて離す。

「ええ」

 並べられたコーヒーを三人が各自のリズムで口に運ぶ。面白い光景、三者とも口につける時間、飲む量が違っていたのに、ソーサーに置くタイミングは揃う。ウエイトレスが引きがって、会話が再会。今日はいつになく寒空が目立つ、コートを着込む通りの女性はどこか探偵のようにも見えた、顔を隠すため、内部の温度に逃がさないための襟はいつしか、その機能性が忘れ去られてるらしい。無駄に立てて、胸元が大きく、これ見よがしに開く、僕の考えが古いのかもしれないな、店主は視線を室内の同テーブルの対面の席の二人のうちの左側の窓際の女性に戻した。

「ご存知とは思いますが、あなたの推理以外に無関心であると判断し、説明をさせてもらいます」

「種田っ」鈴木が彼女の発言に顔をしかめる。

「この方は、あの女と同列に位置する。認めたくはありませんよ、私よりも高機能でしかもその機能を使おうともしない。まったく猫に小判、豚に真珠、とはこのことを言うのです。しかし、事件を短期間で正当性を帯びた正解らしい可能性を知る術は、あの女とこちらの方のみ。つまり、必然的に無理を承知で、あなたにお話を聞く以外、停滞した捜査を打ち破る突飛なアプローチはええ、頼るほかありません。当然、あの女は例外として除外してあります」

「コピー用紙の発言者は随分な嫌われよう」店主は片目をつぶって応えた。

「お前のライバル心が今ひとつわからないな、ふうむ」鈴木は唸る。そのついでに、という動作で胸ポケットから煙草を取り出して、流れるように一本を口にくわえる。

 隣の種田、左半身、主に上半身に日が当る。彼女は片目を鋭く彼に突きつけた。鈴木は、はははと苦笑い、彼は喫茶店でコーヒーと煙草を嗜む習慣が染み付いているのだろう。