コンテナガレージ

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本日はご来場、誠にありがとうございました5-4

「なんとなく……。ようは、その場所に犯人がいたという事実じゃなくて、死体とか現場の状況とか、犯人しか知りえない情報をですよ、こうぺろっと口を滑らした、とまあ、こういった寸法です」

「また、あんたは適当に言っちゃって、少しはね、料理のほかに使用用途を見出せよな、この頭」指先で小川の側頭部が弾かれる。

「あたっつ。もうっ、痛いなあ。地下鉄の改札まで一人で行ってくださいよ。あそこは幽霊が出るって噂でしたよね、へへへへ。一番新しい路線だから、深いんです、こうぐわーっとエスカレーターが深部に誘い込むように、くふふふ」

「あながち小川さんの発言間違ってはいないよ」店主は言った。

「店長、あの私の幽霊話は噂というか、見間違えというか、人に見えてしまう脳の性能のせいであって……」

「違う、違う。事件のことさ」

「事件、ああ、そうですよね、お化けじゃなくって、事件は、そうそう、犯人が証言で漏らしちゃったんです」

「それって店長」作業を終えたらしい、国見がコーヒーを傾けて、レジに背を向けた。一口飲んで息を吐いた。「私たちが聞いた警察の情報で伝わった内容でわかってしまうことですか?」

「うん、そうだね。明らかな矛盾だし、そのときには絶対に知りえない情報だからね」

「降参、白旗を振ります」あんぱんの下皿に敷かれた半透明の紙を彼女は代用した。「ずばっと、お答えを、はい、どうぞ」身振りがついた。

「つまり、死亡時刻の前後か、まさに殺害が実行されたときだったかに、停電が起きたね。そして、証言者は光を見たと語った。紫か青の光だ。ブルー・ウィステリアが翌日販売を開始した僕の左手に填まったこの腕輪が放つ光だろうと、言われていた。店の屋上と停電後の発表会で紹介される。しかし、ある人物は何故か光の色を見ただけで新商品だと言えてしまった」

「その人が犯人ってことですか、うーん、店長の見解を信じられないとはいいませんけれど、青か紫の光を見て、新商品と断定した行為は、レセプションを遠巻きに見ていた人なら、時間の錯綜はありえんじゃないでしょうか」