コンテナガレージ

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手紙とは想いを伝えるディバイスである1-4

「つまり、新部長は真相に近づく兆候を感じ取りたかったと言いたいのか?」熊田がきいた。

「はい、憶測ですが。真相が明るみに出そうなら、何かしらの対処を施す構えだった」

「施設の崩壊を言っているのか?」

「最終的に私たちが真相を掴み、暴露する事態まで捜査が及べば、私たちもろとも建物ごと壊しかねない勢いだった……」

「飛躍しすぎだ」熊田はタバコを吸いきって、すぐにまたもう一本に火をつける。「聞きたいのはそのことか?」

「はい」種田は多少げんなりした様子で喫煙室に背中を向けた。二本目のタバコがお気に召さなかったのだろう。

 思うに、斉藤彩子という新部長の信任は的確なタイミングだった。もちろん、四月という異動の時期であっても、たまたま、その時期を装ってというよりかは、新任は強制的に行われたといえる。部長は自ら、我々に異動の理由を説明するような人柄ではまったくなく、しかも彼は神出鬼没、その正体もまったくの不明というのだから、表に出てくるはずもない。つまりは、部長を引きずり出す罠でもあったように思う。こうして考えを挙げるだけでもいくつもの現実的な可能性が浮かぶ。真実はどこに隠れていてもおかしくない、それにだ、すべては嘘でもある。また、私がまったく予期しない角度から真実が飛び込んでくるかもしれない、まあ、考えるだけ無駄か……。熊田は、舌に物足りなさを感じ、ブースを出て隣の自販機で缶コーヒーを買った。甘く苦い、そして少量のショート缶で口中を液体で満たした。

 これからの人生について熊田は時々考えるようになった。仕事を仮に辞めたとして、私は何を頼りに生きていくべきなのか。人との交流はやはり歳をとっても苦手である。恥ずかしさを覆い隠す電球のような明るさを維持することはままならない、そんな動作はとっくの昔に試したし、まるで効果がなく私が疲弊していくだけだった。現在は惜しみなく、現実に向き合う私でいられるように、極端な人格を演じている。真実しかいえないように工夫されてるのだ。本体を揺さぶるまで、私は反応を示さない覚悟。日常のほとんどは低い沸点で感動を演出してるのだから、楽しくはないだろう。しかし、無理に取り合わなければ、私はずっと正常な思考回路を維持できる。何を考えているのか、前が見えないから後ろを振り返るのか。後悔の心理を久しぶりに味わった、熊田である。

 両方の針が重なり、天井を差す時まで室内でのらりくらり。一度電話がかかってきたが、部署の不足備品の確認だった。

 昼食を二組に分けて食べるよう熊田は提案を持ちかける。熊田自身はほとんどお腹がすいていなかったが、部下たちのためにあえて発言を買って出たのだ。ただ、種田は例外で、彼女も小食というかあまり食事を必要としない性質である。