コンテナガレージ

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手紙とは想いを伝えるディバイスである1-3

「これで僕に手出しできませんよ、相田さん。いつも暇なときに首を絞めるのは、正直僕はうんざりしてたんです」鈴木ははっきり、日ごろの鬱憤を弱った相田に告げたが、相田は痛みの対処に精一杯で、まったく反応を示さない。鈴木は、反論を期待して、用意していた言葉を返そう、そういった態度が消火されずに終わって、少々肩透かしを食らった形。対して、仕方なく今日のところは許してやるかと半ば強引に、怒りの態度を崩さない相田は腕を組み、そっぽを向いた。しかし、それでも相田は顔の痛みに集中し、鞄から取り出した熱を冷ますシートを貼り付けて、ぐっと痛みに耐えた。それを冷めた目で種田が見つめる。これが平凡な日常、部署内の光景である。

 仕事の着手、一時間後に熊田はいつものように席を立って、廊下の喫煙室に居場所を求めた。仮に毎日毎時間、業務を行う部署であったら私の行動は批判の対象になるだろうが、本当に暇なのだ、熊田は理由を言い聞かせるように内部につぶやいて煙を吐いた。

「部長、お話があります」タバコの煙を嫌う種田が喫煙室のドアを引き開けて、立っている。

「タバコを吸っている」

「お時間よろしいですか?」

「ああ、煙に我慢ができるのなら」種田はドアを閉めて、早速言葉を発した。

「前の部長について知っている情報がありますか?」

「聞いてどうする?」

「意味もない役職が何度も変わる意味というのは、いかにも組織の浮き足立った構成を想像せざるを得ません」

「結局は部長が戻ってきた。丸く収まったとは思えないらしいな、その顔だと」

「いえ、そういったわけでは。事件の後始末の責任をとって部長職の解任、というのが、大方の見方でしょうが、私はこの事件の捜査のために送り込まれたと考えています」

「部長が黙っていないだろう」

「知らされるどころか、情報すら及ばない任務や居場所にいたとも考えられます」

「鈴木が会っている」

「隙を突いて連絡を取った。しかし、それはもう新部長に変わったときです」

「そうか。そういえばそうだったな。気になるのか?」

「考えることが他にありませんので」

 熊田は煙を吐き出した。「しかし、新部長が操る情報は我々が供給していたのだが」

「そうです。しかし、あちらは上層部の情報を取得していたかもしれません」

「上層部には包み隠さず情報を与えていた」熊田は語尾に含みを持たせる。

「現場の雰囲気も聞きたかったのでしょう。日井田さんへの訪問と部長との接触も」日井田美弥都とは海道線沿いの喫茶店の店員で、熊田がたびたび事件解決を頼む頭脳明晰で外見が整った女性である。