コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

熊熊熊掌~ゆうゆうゆうしょう 4

 参道みたい、お客様が漏らした言葉が心境とぴたり重なる。回廊の手すりを手前その奥に林床植物が日の目を浴びる緑道、両側にそびえる白樺が白壁のように谷間に場違いな建物が現れたしまった、現実に装飾を施さないといけないのだ、覚えてしまうからね、なにもかも。 ……悠長に見慣れた景色に現を抜かしてるはいらなかった、駆け足で階段を降りた。
 ドアが開いている?目を疑う、思考がめぐる、納得に首を縦に振る可能性を引っ張り出す。しかし、空振り。頭を振る。冷静に、落ち着け、呟きが小声となり骨伝導と空気を震わせ、それににじり寄る靴底の摩擦が紛れ込む。
 迫る、呼吸を整えた。
 漏れ出し堪える筒口の残光。埃はたいそう優雅に思い思いに宙を乱舞する。電子錠の点滅の理由はこれで判明した、ドアの半開きが一定時間以上続く場合、故障・事故が疑われ係員所有の電子錠に知らせが届く仕組みだった。僕は漸くそこで誤作動の可能性を切り捨てられたわけだけれど、……次の場面を覗いてしまわなかったら、そもそも日記など書き留める慣れない習慣に手を染めることを避けられたんだ。まあ割を食った同僚よりはかなりまし、という戒めがこうして書き連ねさせる。
 まずだ、立ち尽くす遠矢さんがが目に入った。声がけには無反応でけれど聴覚は正常らしく、場違い速度で以って顔が向けられた。揺れる黒目がちの瞳、手をかけたようにも見えたし現場を目撃した直後の衝動に支配されるすくみ上がった数分後とも思えた、空っぽ、ということは自信を持って明言してやれる。
 そしてだ、奴とご対面を果たした。生まれてこの方死体と形容される物体を直接見たのは初めてだった、表現に……困る、詰まる。全体を覆う雰囲気がありのままの描写を妨げようと抵抗が働くみたいで、書き出しに手間取ってる。落としては離し、読点にも満たない点が改行したばかりの先頭を埋めていった。
 動き出すことはないのだし、安全に変わりなくてドアは半開きなのだからむくっと襲い掛かってもだ、ドアを開けるのに一動作を失い僕はその隙に階段を駆け上がればいい。