冷えた体をまずは温めよう、彼女はバスルームでお湯を浴びた。
温かいでしょう?
冷たさを知ったもの。
聞きたいでしょう?
呼ばれたいもの。
会いたいでしょう?
初対面だもの。
話したいでしょう?
それは、どうかな……。
正直になりなさいよ。
うーん。どうだろう、私よりもね、アイラが、彼女を優先してしまうから、たぶん、無理、言えない。思ってても、だって、私そうやって生きてきたんだもん、今更、突然、意見を求められても、自由に素直って……。
曲を聴いてます、なんて無意味なことを言いそうだから、ためらってる?
いや、わかんない。たぶん、急に会ったら言ってしまう。それぐらいに私は彼女を崇拝してる、してしまっている。
肉体的な接触を求めるでしょうね。
「違う、それは断じてありえない!」タイル張りの室内に響いた。水がかき消した、泣きながら問いかけた私と叫んだ私をかばって。
アイラに呼ばれたのはうずくまった、道端で佇む、トラックに水をかけられた私だ。息をつなぐこの濡れた温かさを感じ取る、ずるい私とは似ても似つかない別人。だったら、つまりは、そっちの私だったら、会話も接触も許されるとは思えないだろうか。考えすぎか、それとも好都合な解釈か。
落ちてみるがいいさ、水のように。俯いた先、髪の毛が絡まる銀の排水溝がしゃべった。
「高きに登るは必ず低きよりす」、と私は応戦した。