コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 7

 しばらく、時間が無用に過ぎた。窓を開ける、煙草を吸うのだ、これぐらいの優先権はあって当然。無言で火をつけた。赤くぼんやりと顔が照らされた。車に置きっぱなしの筒状の携帯灰皿を窓の下のドリンクホルダーの窪みから取り出す。

「私もよろしいですか?」不破も喫煙者らしい、軽く頷く。灰皿に境界線の役割をあてがう。頼んだ、灰まみれ。

「張り込みはこのまま続行します、明後日を目処に引き上げる予定。数日待機の可能性も視野に、一応最短の日数は明後日、ということです」

 アイラは煙を吸い込む。応答はしない。シートの軋みが生々しい。かすかに屋外から音声がちらほら、ほとんどが金属音、搬出機材の摩擦である。

「三件目、宮崎県の会場で発見した死体の身元は鹿児島在住の鬼島麻子と判明、捜索願が鹿児島県警を通じてこちらに伝わり事件が発覚した、という状況です。二件と同様に背中を刺された、凶器は手矛という特殊な矛で、外傷は一箇所、着衣の乱れはなく、現金及びキャッシュカードは手付かず、鑑識の調べでこれまでに犯人特定につながる物証は手紙が最有力ですが、いかんせんその現物からもめぼしい証拠は得られていません。被害者に共通の所持品ですが、繋がりは薄い。手紙の材質も異なりますし、そもそも当人の指紋が検出されるのみで、付着物はほぼゼロに等しいとのこと……、物証の線から犯人を辿るのは厳しい状況と言わざるを得ません」

「自殺の可能性を排除した理由は?」アイラは煙を吐いて、訊いた。

「背中の同一箇所が刺された、マスコミへは背中とだけ発表しています」