コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

黄色は酸味、橙ときに甘味 1

 (備考)田端ミキの遺体は遺族に引き渡され、十八日に告別式が行われる。

    場所 熊本興行センター

    時間 午後五時』

 一紙を閉じた。新聞を交換。

 スポーツ誌のカラフルな紙面は手を載せていると色が移りそう。膝に乗せた次の一紙はしばらく開かなかった。

 警察が見つけた死体が所持する手紙は伏せてあるらしい。

 非公開に舵を切った。要するに不確定な情報がまじっていたから、そう捉えられる。アイラは窓に暖めた息を吹きかける。

 手紙を手がかかりに糸口を……捜査は真相に迫って、真実を見つけつつあるのか。そもそもマスコミへの情報公開は捜査を妨げる可能性が予見された場合に、ある程度情報をあいまいに、またはまったく伏せ、制限を加えた情報の提供が許される。情報は有益な価値を持つような幻想を見せ付ける。しかし、それほど重要な手がかりを手紙から導けるものだろうか、アイラは見飽きた車窓に流れる山林に、投げかけた。

 私に関連した事件……。退屈な日常に比べて格段においしそうな対象。私の命を狙っているようには思えない。心理的圧迫を狙うのなら、徐々につまり二件目に起きた死体は私のより近いところ、ライブの会場内の観客が殺されなくては、不成立に終わる。したがって、犯人は私以外の人物、または私の近辺で注目を集めたいはず。しかし、なぜ?そう、そこが不可解。まるで、利益に反したような振る舞い。計画性と突発性、無防備で浅はかな面も散見される、移動手段も徒歩や自転車等の比較的逃走に不向きなスタイル。うーん。彼女は唸った、鼻から息がもれる。

 少量のデータでは抽出に偏りが生じてしまうのだろうな。

 アイラは潔く事件の一部始終をしまった。

「アイラさん、事件のことを考えてますぅ?もしかして」運転席のカワニがきいた。こちらの気配を窺っていたらしい。

「俗世間の事情だけならば取り合わない。私にかかわりたいと願う人がいるみたいだから……、勘違いしないでください」

「嫌な予感がします。次は火曜の会場に戻る。それって下見を終えた犯人にとっては好都合じゃありません?」

「また会場で犯行に及ぶと?」

「アイラさんには黙ってましたけど、宮崎と熊本の会場は念のためライブの前後一日、警察が周辺を警備してます」

「そうですか。警戒を解いた、そのあとに、死体は見つかると踏んだのでしょう。たぶん手がかりを追うよりも確率は高い」

 そうだ、私に関連した事件という印象は植え付けてある。

 会場に使用した施設をマスコミが勝手に調べ上げ、報道に踏み切る。

 それならば、警備の解除を待って犯行に及ぶのは懸命な判断である。

 なぜなら、私のツアーは二週を残し、より一層厳重に固める私周辺の警備によって、前会場の警戒は解かれ、薄れていくのだから。