コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

拠点が発展6-5

「急いではいない」

「事件ですか?」

「こんちには」

「どうも」熊田は特徴的な瞳の色と髪を伸ばした種田にそっくりの女性に会釈。「どちらさまで?」

「現場を見にきたんですの。あら、その方、亡くなってますの?」畏まった言い回しは、わざだとだろう。

「あまり見ないほうが……」さっと彼女は鈴木の隣に位置を変えて、昆虫を観察する子供のように眺める。「鈴木、シートを」

「あっ、はい」柏木も手伝って一般市民への公開は幕を閉じた。

 種田が隣の女性を紹介するはずもない。

「もうおしまい?」フードをかぶった自由気ままな女性の詳細を相田が種田に小声で尋ねた。注目の的である彼女は雪の平原へ大の字を描いて背中から雪に埋もれている。警官の柏木が慌てて現場を荒らさないでくださいと、奔放さを注意するが、彼女は平然と穏やかな表情を浮かべて上空を見つめていた。

「知り合いなら、現場から遠ざけてもらえないか」熊田は種田に言う。

「少しは自重したら?」種田は冷ややかな目で彼女を見据えた。「現場の視察なら、広範囲を見るべきじゃないの?」

「私が感じ取るのは景色ではない、空間よ。敷地の規模は図面が教えてくれる」

「仕事の邪魔」

「つれないわね、よいしょっと」起き上がった彼女はコートの雪を払う。「車は置いていく、今日中に返しておいて。それと、国際免許で運転しても捕まらない?」

「問題ない」

「そう、ありがとう。それじゃあ皆さん、私はこれで失礼させていただきます。ではでは」

 靴への進入を気に留めない足取りで彼女は颯爽とステップを踏むような軽やかさで去っていく。道路に行き着くと、歩いては止まり、また歩き出し、景色を眺めていた。

 彼女の正体を尋ねる前に、種田がしゃべり始めてしまう。しまう、という感想はおかしい。種田の行動は刑事の模範そのものである。

「事件性が認められるでしょうか?」

「なんとも言えないな。自殺とは言いがたいが、方法がないともいえない」

「可能性を広く保った意見です。死体を見ても?」

「ああ」

 種田は致命傷と思われる額しか見なかった。それ以外の観察を切り捨てて、覆ったブルーシートを被せた。

「昨年の事件とのつながりが想起されますが、装っているとも思えます。酷似させた状況を並べ、我々の対応を観測するのが犯人の思惑でしょう」