コンテナガレージ

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非連続性5-3

「事件は解決したのでは?」美弥都は筒状の器具・フレンチプレスについた汚れを、泡をまとわせ落とし丁寧に水を切って、布で拭く。事件は年末に解決したと店長と常連客の会話が耳に届いた、私から事件の顛末を追いかけたのではない。美弥都はテレビも見ないし、新聞も取らない。もちろん、SNS等の情報発信は手をつけていなかった。どれもすべて受け身の媒体、利用者は発信者の意図に気がつかないのだろうかと常々思う彼女である。 

「はっきり……解決したと、私はどうしても思えないのです」

「ここへ来たのは個人的にざわつく胸中の整理にやってきた」

「手厳しいですね」

「答えを知っているなら、どうぞ早めに。そうすれば私は帰ります」種田がいきまく。

 小突いた種田の一撃がきっかけのように下り坂を転がる美弥都が唐突に事件を紐解く。「他殺か自殺、この二つが最有力。しかし、首を絞めたあるいは手首を切った、高所から飛び降りた、車で崖に落ちたなどのようにありきたりな方法を取ると彼女の身辺調査から死を願う道筋を見出してしまえて、事態は滞りなく解決を迎える。よって、自殺の特定方法が困難であれば、調査は継続、さらには自殺以外の可能性にも意見が分かれるかもしれない。すると、他殺の説が浮上。身辺のさらに細部が調査対象に上がり、そこに本来の目的があらわになる。そういった二次的、三次的な段階を予測した出来事ではないでしょうか」

「以前の事件との類似しますね、ひとつの真実が明らかになるという箇所は」顎に手を当てて熊田は唸る。

「いいえ、それは隠されていたものが明らかになったに過ぎません。今回は、そう段階的に真実が明るみに出るよう工作されたように思います」