コンテナガレージ

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パート2-5

「要望にお答えします」

「不満ですか?」

「いえ、ただ反論なさるとは思っていなかったので」野心家には見えなかった。「どちらかといえば、哲学者や科学者とお見受けしました」呟きには答えずに僕は質問をぶつけた。

「どこで僕を見つけたのですか?」

「ご自身が我々にメッセージを送ったのですよ、忘れているようですね」

「考えたことを体現したまで、実現可能とは当時まったく思っても見なかった世界。口に出すだけで、しかも僕が言うのですから、信憑性は極端に低い。ちょうど、退院した病院の玄関でカメラを向けられたので、遊びですよ」

「お父様が動き出します、それではご連絡は手紙でお願いします。またの、ご連絡を」背伸び、踵を離しコードレスフォンをキッチンに置いた。頭をかいた父がコーヒーを注いで、一口のみ、こちらに視線、眠る時間だと告げて、自室に引き返し、僕はテレビとお別れ、リビングの電気も消した。誰かが寝ていたベッドにもぐりこみ、意識を自主的に途切れさせた。

 数日通って学校のサイクルを植えつけたら、あとは自動制御に任せる。死角にさえ気を配れば、親や教師それにクラスメイトその他生活に干渉する人たちの交流は問題なくこなせてしまう。残りは死角の再構築だ。授業はじっと座っていられ、景色の変化が少ないため、構築の練習には最適なのだ。教師に当てられ黒板に問題の答えを書きに席を立つときに、クラスメイトに足をかけられ笑われたが、補えない死角への配慮を僕わからせてくれたので、笑顔を振りまいてあげた。喜びの表現は、気味悪く、後味の悪い雰囲気を作り出した。そのため、それ以来は、あまり僕を揶揄するものは現れなかった。唯一表と裏の意識が噛み合わない小太りのクラスメイトが、たまに挨拶のように悪態を放つが、構って欲しさと寂しさ、弱さが前面に押し出されて、不憫にさえ思えたら対処は容易い。

 帰宅後、母が仕事の食材を仕事場に運ばなくて行けない、そのため僕に何度も家を出ないように、ドアを開けないように念を押して車に乗り込み、出かけていった。僕は死角の補いに、あらかじめ一定の色を死角に感じさせる手法を試みつつ、見つからないよう裏口から庭のハッチにもぐりこんで、裏の家に入った。

 監視の届かない地下室で過ごすことがほとんどである。カモフラージュのために宿題を残り一問を残したノートを広げて、キッチンにおいていた。母の車の携帯の位置は常にモニターに送られてくるシステムがこの家には備わっていて、モニターは各部屋に設置、逐一状況を把握、家まで一キロを切ると合図が鳴り、教えてくれる。 

 色が左目と符合すると信号が脳内を走る、観測を計りながら僕は知識を読み漁った。