コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて2-2

「それほどお米は重要だろうか」店長が問いかける。背を向けていた館山も顔を向けた。三人が見つめる。「一人暮らしでお米が食べたいと喉をかきむしるほどの欲求にさいなまれたことはあるだろうか。お米は食べられる、数ヶ月前よりも高額な料金を支払えば。そうすると、欲求が耐え切れなくなるまでお米の購入、摂取は待つのではないだろうか。金銭的な余裕、富裕層は例外なく高級品を惜しげもなく、嗜むはずだ、これまで見向きも取り立てて味わっていなかったのにだ。一般の市民はいつも食べていたから、機会は減る。ただ、その分、別の食品や食事、メニューに目が向く。狙いはそこにあるんじゃないのか。お米を食べられない店ではなく、お米の代わりに食べるならこの店、という印象が今後の経営を占う、と僕は思っているけどね」

「……店長って、何も考えていないように見えて実はちゃっかり、しっかり考えているタイプなんですね。テスト勉強も何もしてないって嘘をついたでしょう?」はあぁと感嘆の息を吐き出した小川は、友人に話しかけるように言葉を発した。

「何も考えていない、とは一言も言っていない。黙っているからといってそれが単に無頓着、無関心を連想するのは安易な発想で、対象に抱く感想は自由だけれど、もっとよく人を観察するべきだと、いわれの無いレッテルを貼られてきた人間からは思われているよ」

「返す返す、すいません。勉強になります」敬礼のようなポーズで小川は態度を改めたつもりらしい、若さでは括り切れないあざとさが痛々しい。彼女は素直に謝れないのだろう、許容は照れ隠しがわずかに見え隠れをしてくれているから通じるのであって、これがもし完璧に幼少期の彼女が遮断されれば、世間における通用は難しいだろう。年齢という要素も背後で大きく影響しているのも事実か。

「鶏肉は今日のうちにルーに混ぜますか?」興味津々、館山はすべての手技を店長から盗み出す気構え。