コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて3-7

「お弁当が一人だけご飯なのはうちの子だけ、他の子にもアレルギーを持つ子はいます、それに応じた給食も学校側は作ってくれる。けれど、主食の白米の価格高騰が影響してパン食が今学期から始まって、息子にはいずれ持たせるお弁当を、私は、私は作れなくなってしまう。なんでもします、空いた時間で、お店の手伝いをします、ですから、だから、お願いですから、お米を、息子のお弁当を私に作らせてください」洗浄器がしゃかしゃか、ブザーで完了の合図。店長は、その音に背中を押され、押し寄せた女性の高波のような訴えを引き剥がし、嗅覚を再開、オーブンのカレーを取り出す。こんがり焼き色のついた姿に続いて香りがまとう。

「お米は自宅で食べる分とお子さんが学校へ弁当として持参する分の確保なのですか」店長は、冷たくあしらうことはせずにやんわりと言葉を吐いた。

「そうです、私が食べる分ではありません」崩れた内面が顔に映し出されている、女性と目が合う。「ママ友は、陰で噂をしてます。安く手に入れる為に手段を選ばない人、私をそういう目で見てます。だけれど、私はまったく一向に構わない、息子の未来を途切れさせるわけには絶対にいきません」張り詰めた想いは、感度を人と通わせるのだろうか。他人には決してなれはしないのに。

「別の方法を考えることが先決だと、私は思います」店長は応えた。

 女性は鼻で息を吐いた。「考えましたよ、何度も寝ずに四六時中、寝むれなくて、ずっとずっと頭がおかしくなる手前で押し留まって、アレルギーについて学びました。できる限りの治療も受けさせました。それでも症状は改善しない。小難しい文献も読み漁った。しかし、どこにも症状の発生メカニズム止まりで、改善の方法や対策は書かれていても曖昧なもの、何一つ言い切る、断言の表現がないのですよ!」

「食べないという選択はどうして選ばないのでしょう?」

「食べない?食べなければ、死んでしまうわ、冗談でしょう」

「宗教上の理由ですか、食べないのは。生体機能を維持するための食材ならば、高額になったお米よりも安価で手軽に手に入る代替品は購入が可能」