コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて3-8

「ただ食べないだけではいけないのですよ、最低ラインが白米。週に二度の献立の白米によってその時だけ、うちの子はクラスメイトと共通を許される、仲間には入れる」

「いずれ給食の白米も献立から姿を消すと推測されます」淡々と店長が断崖へ女性を追い詰める。

「そんなことはわかってます!」沸点が上昇。水ならばぐつぐつ沸騰している。女性のボディアクションの回数が増える。「とりあえずの措置だけでもって、思って、こうしてお米をかき集めているんです。それに、いわれのない中傷がいじめに発展しつつあるのです、急がないと、クラスで孤立しかねません」

 米を食べ始めるように日本人の食生活に変化が見られたのは、狩猟生活をやめ、農耕定住に切り替えてからだろう。植物性の蛋白源を元に体が作られた。補えない生命維持の栄養素は、野菜や果物によって摂取されたと想像する。今月末には人口の半数以上に米の摂取が途切れる時期はもうすぐ先に差し迫る。しかし、店長は思う。関わり合いの間柄、歴史、受け継がれた伝統は、それほど重要な守るべき文化だろうか。積極的に、好きだから取り入れているのではないのだ、生まれながらの慣習が白米を要求しているに過ぎない。受け継がれた遺伝子の作用が今後どのように、非摂取の長期離脱に拒否反応を示すのかという未知は避けられない。しかし、沈黙は金、などという冷静な情勢は利権や支配が絡んだ食社会においては無に返す。伝統を守るのは一握り、大切で後世に残すべきで高質で気高く美しいと謳うのは、外側から眺める人物であり、彼らは無尽蔵の伝統に守られた資金源を確保しておきたいのだ。

「ディナーに提供するお米を三キロ、差し上げます。これがすべてです。わたしは、これより先、お米の価格が以前の価格に推移するまで利用を取りやめると決めています。いくらか、米と別れる時期が早まっただけのことです。お米と共に食事を愉しむお客への配慮もまた一日早まった」

「よろしいんのですか、本当に……」

「店長、いくらなんでも気前が良すぎます。私は反対です、販売は無謀ですよ、今日の売り上げが下がります!」

「それは来週下がる分の前倒しだ」

「来週は月曜日、今日は土曜。お客の単価は雲泥の差」

 食い下がる国見から視線をはずして店長は言う。「お米を使わない状況でお客の反応を調べる、この状況を僕は好意的に捉えている。改善の余地は必ず発生するだろうし、一度で安定的な対応はおそらく、いいや絶対に不可能だといえる。そうすると、行動は自然とお米のない状態に移り変わる」