コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 2-6

 とうもろこしが注目を浴びる日は遠くない。

 需要の高まりが生産性を向上させた。

 店主は手にする注文用紙を指ではじいた。

 要望が集まり、資金が舞い込む。

 設備が整い、生産性が改善される。

 多くの人に行き渡り、安定的な消費が実現。

 一定量が食卓に並ぶのなら、この上ない利益が生み出せる。

 変化の少ない、競合も存在しない、家庭消費における位置づけが永続性を実現する。

 注文を送り、店は今日の業務を終えた。従業員は不思議そうに僕を見つめるまではいかず、数秒表情から内情を窺う程度で、はっきりと心境を聞きだす暴挙には出なくて、こちらとしては安心した。

 明日のランチのために、仕込み作業に取り掛かる。厨房の二人、小川と館山が必死に手伝いを申し出たが、昼間の疲労と切れそうな集中力を明日以降に持ち越さないために、やんわりと断りを入れた。疲れていた、と明言はしなかったが、自分の体調を知ることも重要だと伝えた。国見は店を出る直後に意味深な顔を店主に向けていた。しかし、あえて取り合わなかった。一度、送ったのがいけなかったのだ。だからこそ二度目はないのだと強調するしかない。取り扱う情報が面倒、宙ぶらりんの放置を余儀なくされる情報が多すぎる。

 息を吐く。酸素を取り入れる。

 ため息とはこれからの助走に必要な前向きな姿勢。

 過去を顧みる表現に僕は思わない。

 詮索と想像を断ち切って、ランチを創造する店主は、暗がりの店内を歩く。

 二周を歩いてからであった。

 ハンバーグの競争相手を探索中に、ドアが開かれる。鍵はかけていないので、人がノブを回せば、あとは引くだけ。

「もう、閉店でしょうか?」店内の暗さと時間を考慮すれば、何のことはない、予想は確固たる現実。視力が落ちているのにコンタクトの装着を嫌がったのか、それとも眉の下、鼻の間、左右に二つの玉はガラスだろうか。しかし、顔はしっかり僕を捉えているようだ。気配は緩やかな流れ。

「ご覧のようにお客は一時間ほど前に帰りました、なにか?」

「私の執事がとんだ無礼を、開店前の忙しい最中に店を訪問するとは、よく言って聞かせました。いいえ、あなたが望むのであれば、解雇することも可能。それほどの非礼。どうかお許しを」しなやかに女性の小ぶりな頭部が下がる。そして、引きあがる。髪は左に束ねて肩を前面に流れる。話の内容は、早朝の言いがかりを言っているらしい、するとこの女性が米を無理やり押し付けようと願った男の主人と言うことか、店主が思い描く主人の姿より圧迫感は少ない。

「端的に用件だけを。暇そうに見えますが、これでも貴重な時間を費やしているので」店主は片手をマジックの初期段階、種がないことを証明する動作で、天井に向かって開く。