コンテナガレージ

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独自追求1-5

 降り立ったホームは空いていて、地下鉄を待っている人も数名、既に改札で入場を制限しているのかもしれない。目的地までは二駅だった。歩けない距離でもない。これからは乗ろうとする人がホームに増えていくだろう。好まない可能性が想起されると足は勝手に出口へと向かった。

 目指す方角がわからなかったので改札を出て、売店の隣の壁面に地図を発見した。改札では流れる掲示板の表示に立ち止まる人が増えていった。

 三番出口を上り、光を浴びる。笛の音が風に乗って飛来、古めかしいでも懐かしい音色が体内に無造作に入り込んでかき鳴らす。音のする方へと体が吸い寄せられた。前方の交差点、信号機の更に上の看板に目的地を指し示す駅名を避けて私は公園に足を踏み入れた。駅から目と鼻の先。公園を取り囲むようにホテルが点在する周辺の景色、公園はいつの間にかホテルの安らぎに成り下がっていた、本末転倒な公園の立ち位置。

 飾りだけの立て看板をよそに公園内に入った。人が流れて音に近づいていく。浴衣の人物が多くなる。着慣れない服は着飾り過ぎて生地と体が馴染んでいない、浮いている。香ばしいトウモロコシに醤油の香り、焼きそばのソース、甘いリンゴとフランクフルトにたこ焼き。お腹に訊いててみるがまだ食事の時間ではないようだ。

 公園の反対側に出て外周を回り地下鉄の入り口に復帰するつもりであったが、ひらけた空間に簡易なステージが目に留まり、立ち止まった。カラオケ大会でも催されるのだろうか、しかし、覚めるような水色ハッピを着た人物たちはそわそわと、そしてそのうちの一人はしきりに誰かの現在位置を携帯で確認していた。

 ステージ前の広場は客席から入り込めないようにバリケードが運び込まれる。ステージの足元に三つのスピーカーが置かれた。歌手が足を乗せる機能も備えてあるやつだ。何気にそれらの作業に私は見入っていた、音楽との関わりを無意識に求めいたのかもと後になって推測する。邪推かもしれない。ほんの気まぐれだったかもしれない。