コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

再現と熟成4-6

 講義が迫っていたので公園を出て、交差点の信号で待っていると、サインを求められた。いつまで飾られて崇められるのかを書いている時に考えた。少女の顔は一様に嬉々に満ちて飛び跳ねそうなぐらい感情がほとばしっていた。サインはいつも答案用紙や申込用紙に書く時と同様の文字と決めている、だって殴り書きで誰が誰だか判別に難しい名前は名前とは認識できないだろうから。

 午後の講義の長いこと。ただ、話は興味深く移動時間の暇つぶしには最適だった。週末、金曜。今日は夜までレコーディングだ。終電で帰るつもり。曲は精力的にというか、日々作詞作曲の毎日。それがいつだってギターを手に入れてから私の日常だ。苦にはならない。あなただって夢中で時間も忘れて取り組むことの一つや二つが思い当たるだろう。

 案の定、帰り道に月が出てきてお帰りの挨拶。数ヶ月前にリリースした曲が世間に受け入れられたらしい。私はほとんどテレビも新聞もネットも情報もたらす友人もいないので、まったく世間から隔絶された環境に身をおいているために家族と交わす食卓での会話が微かな繋がりだ。それもこのところは、とんとご無沙汰で冷えたご飯を落とした照明の下で食べる。

 寂しい?まったくもってそのような感情は抱くだけ労力の消費を余儀なくされる。ラジオやテレビの出演が寄せられているらしい、所属レーベルは私に再三出演に頭を下げてお願い、しかし、情報はもう勝手に垂れ流される媒体よりもたった一つの道だけを作ってそこを通るようにした方が、獲得の感動も味わえるだろうし、私の人物像をあれこれと想像してももらえる。考えることが必須だと現代に投げかけてみるのだ。そうそう、年末に紅白に分かれて勝敗を競う番組からもオファーが来たそうだが、出場に意味を見出せなかったので断った。母親には馬鹿と言われ、弟には良かったと言われ、父親は一緒にそばが食べられると言われた。土日はほとんど家にいない。罪悪感はない。それが私を私でいさせるための方策で方向性で方針に方法。