コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 4-1

「受け取りを拒否します」

「ええっと、そんな、いいえ、その、拒否ですか?」

「まっとうな意見ね」戸口の小麦論者の女性が店主の発言を擁護、後押し、あるいは同意する。しかし、彼女の意志と僕とは、判断が異なっている。

 ヤマイヌ急便の配達係は、ベルトの位置で帽子を掴むように握る。「送り主様はお知り合いの方ですか?できればその、持ち帰るのは控えたいと思うのですが……」

「顔見知りではありますが、知り合いではありません」

「困ったなあ」

「受け取り拒否の権利というものは、あなたの労力如何によって、つまり重量の重さが配送センターに持ち帰る仕事量に比例して拒否される。そういった表情をされている」

「私は一言も」

「じゃあさっさと持って帰りなさい。表のトラックをいつまでも道に置きっぱなしにできないことぐらい、わかっているでしょう」彼女は手首を回す。

「ああ、やっと来たのにね」有美野アリサが無造作にドアを開け、店内へ自宅のように入ってくる。「お兄さん、サインをもらったら、荷物を運んでちょうだい」

「おーい。荷物は受け取らないってさ、店長さんが言ってるよ」遠くに話しかけるような口元を覆う叫びの格好で小麦論者の彼女が言った。有美野は、「ああ、そこに人がいたんだ。まるで植物かと思った」、そういった面持ちで彼女へ取り合わない強者の余裕を見せ、対峙する。

 店主は、手招き。裏口から配達人を脱出させた、彼も素直に要求を飲み込んだ。サインは無記。そして、ボールペンは店主の手に残された。

「従業員には見えない。部外者は出て行きなさい、お客なら時間を守りなさい」

「これだから世間知らずには手を焼く。まったく常識っていう概念をわきまえているのか」

 有美野が店主に体の向きを正対、首が人形になりきって傾く。「お米を受け取りましたか?」

「おいこら、無視するな」彼女は有美野と距離を縮めた。

「呼んでますよ」店主が目線によって戸口の彼女の存在を知らせる。気づいているのに知らせるというは、こっけいな光景。

「少し黙っていてくださる?私もこれから出勤です、時間がないの」