コンテナガレージ

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お手を拝借、今日はどちらに赴きましょうか?3-3

「どうしたの、なんだか口調が堅苦しいけど」金光の問いかけは彼女のまなざしで一掃される。「……ううーんと、どうだろうかな、そうさねえ、ああ、まずい時間が。光を指して声を上げたの僕だけだったし、たぶんだけれど、誰も見てなかった。うん、そうだ。停電に意識は持っていかれたしね」

 確認の合図を彼女に送ろうか。ここできっぱりと別れを告げるべきかもしれない。

「電気が消え、光が目に入った。光というのは停電前に気がつかない明るさだった、それとも通行人の目に留まっていた可能性はあるの?」

「探偵みたいだ」金光はくすっと笑い、口元に親指と人差し指の股を当てる。引き締まる彼女の表情に、反射的に彼は姿勢を正した。少し痩せたか……。

「答えて、時間がないんだって言ったのは、あなた」

「そうだね」金光は唸ってみせる。もちろん、思い出す記憶はひと欠けらも残ってはいないのだ。「あんまり覚えていなくてもいいかな、憶測でも僕が話す価値はあるんだろうかってことだよ」

「価値のあるなしの判断は私の行為。心配は無用」

「たぶん、だけれど、店のお客もそれから行列の並ぶ奴らも、他の通行人も屋上の光は気に留めていなかった、と思うね。大々的に、だって、その下で入り口で盛大な新製品の発表会が行われていたんだ、ライトアップがひときわ通りの中じゃあ目立っていた。まあ、だから店の周辺に意識が及ぶってことは考えられるけれど、もし万が一見ていたとしても、屋上のライトはセレモニーの一貫って捉えるんじゃないのかな」

「あなたはそこへ店へ足を運んだ。光が見える場所に。他に目的があったの?」

「なに、その言い方。さっきからさあ、突っかかってるよね。はっきり言えばいいよ」金光は多少語気を強めた、苛立ちが芽を出し始める。時間も迫る。

「目撃者になるために、そこへ移動をした。自分の所在を証明してくれる人を隣に座らせ、光を大げさにアピール。アリバイはこれで成立するわ」

「僕は事件の容疑者かなんかと、勘違いっていうか、おかしいぞ、今日。回りくどいし、急に呼び出して、日中の忙しさを君は知っているはずだ」

「もちろん。言い聞かせるように、いわれた。それに従った。従順ね。あなたは私に強要した。意見を受け入れるように、仕事が円滑に運ぶために、父の名誉を弟子として掲げ、大いに利用したいがために。私は誰のものでしょうか。あなたのもの、いいえ、私は私がもっとも必要とするわ。肝に銘じて。これからは、あなたは私の意見も取り入れるの。わかって?」