コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ1-7

 川沿い。

 自転車とランナー、歩行者が順々に通り過ぎる。赤いトラックロード上は健康志向の強い人種が集まる居場所。

 確かに休暇は必要だった。目的にはないにしろ、開発の際に溜まった休暇はちょうど残り数ヶ月で丸々五年分、会社の方針は期間内に私に幾度となく消費を義務づけていた。それをあの女はかぎつけた……。

 飛行の事実を警察に話すわけにはいかない、私が作り上げた商品の披露の場が台無しになる。だから、黙っていた。とはいえだ、男は歩調を緩める。くしゃみが出た。川沿いに強めの風が吹き付ける。

 このまま真相に行き着いた場合、私の身の潔白を証明することになるあの女の所在を警察に明かす必要性に迫られるんだ、そうなれば、どちらの手段が最適だろうか。同乗を漏らせば、あの女との関係性を示唆してしまい、私は約束を破ってしまう。以前に彼女とは互いの関係を公表しないように制約を誓ったのだから、知らぬ存ぜぬを警察に突き通す手段の側から身の潔白を証明することが必要となる。ただし、それには証人が必要になる。一度、飛行船は飛ばしていない、と当日の飛行を否定した。嘘をついていた理由を確実に聞かれるだろう。

 しかし、妙な警察の調べだったと、男は感じていた。丹念に警察の動きを振り返り、追ってみる。飛行船がS市上空で目撃されたことを訪問の理由に挙げていたが、そもそも飛行船が上空を飛ぶ許可は出ていて、運営上の問題点はなかった。何かしらの事件に飛行船が関わり合う、そう警察は踏んでいるとしか思えない。