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不躾だった私を、どうか許してくださいませ3-6

「だから、何を言っているの、抽象的で的を射てない。射ててすらない」彼女は二口目を口に。

「あなたの口から聞きたい」

「頑固ね」

「言って」

「……」

「ブルー・ウィステリアの前で別れた二人をこの目で確かに見たんだから。距離は数メートル。仏具屋の入り口が真横にあった、ねえ、やっぱり正直にさ、警察に打ち明けるべきだって。あれから報道でも言ってたけど、捜査に進展はないって。行き詰ってるんだって、それは判明しない被害者の身元が原因よ」

 言い切った、言ってしまった。後戻りはできない、関係の修復も、修繕も、まして再構築などもってのほか。会社での居場所唯一といってもいい、話し相手をこれで、私は失った、私から積極的に手放したんだ。 

 真下はこらえきれずに笑いを噴出した、取り乱した、と私は思った、気が触れたと。

 思い違いで済む、彼女の態度は九十度、側面に据えた仮面と入れ替えるかのように、三白眼で見据える目つきの表情を取り出す。

「自分の立場を考えたことがあったのかしら」色白の顔は漂白された真っ白のそれも薄手の透き通るシャツ、真下の食事風景が妙に生々しく感じた、まるで、そうまるで命をむさぼっているかのようだった。稗田は唾を飲んで、水を含む。喫茶店に入る前に、S駅のコンコース内の店で、立ったままホットサンドを食べた。空腹では体力が持たないけれど、何も食べないというのはまだ、気力と神経を使う接客の仕事にはいくらかのエネルギーに変わる糖質を脳が求める。数十分前の消化が始まりかけた影響だろう、眠気が襲う。しかし、言い訳を理由に仮眠を申し出る状況ではない、まして答えを濁せないのは、私が仕掛けた話題なの、打ち果てるつもりだったはず、決断が揺らいだ?まさか、一晩考え、翌日の朝になって、その考えが頭を離れてなければ、打ち明ける、問いただす、確認を取るこれらを実行すると自らと約束を結んだではないか。都合よく忘れられるわけがあるものか、私だって、私だって、二人の姿を私に嘘をついてまで、見たかったわけじゃないって、悟ってよ……。