コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ3-7

「支店長から聞いたのね、過去の付き合いを」意を決する、燃え尽きる覚悟。稗田は、テーブルに戻すグラスを合図に口火を切った。

「はずれ、単なる勘よ。あなたは信じないでしょうけど、尋ねてない、それだけ」

「支店長の家族に迷惑がかかってしまう、考えがそっちに及ぶのは当然の配慮に、私は賛成する。けれど、倫理的な観点を優先させたいとも思うの。亡くなったのだったら、すぐにでも家族に引き合わせてあげたい」呼吸が荒い、目頭に集まる熱の塊を押し込める、涙を見せないことがこの歳まで仕事を任された条件の一役を担ったんだ、放棄は選択外、こらえて、こらえろ、こらえるんだ、保て、意地でも、靡くな、楽な方へ。俯瞰した観測にすり替えろ、涙は何故、流れるのかを。

 寸分たがわぬミリ単位の調節、真下眞子は逸れた彼女の眉や赤い口元、白い透き通る頬、細い鼻筋、移動の先々に先回り、私の位置をこちらは掌握しているのよ、顔が雄弁にしかも微かに悟れる程度の目配せで瞬く。

「仮に、その人物が支店長だとして、仮にその人物と私が付き合っていたとしましょう」彼女は魔法をかけるステッキを摘んだ、コーヒーのスプーンを摘みあげ、淡いピンク色の曲線を描く。「親密な関係を警察は嗅ぎつける。聴取もされるでしょう、何かしらの証拠があって、取り調べがその状況下で着手に踏み切った。すると、亡くなった人物が支店長、と既に警察は身元の調べを終えていたことになるわ。家族へは当然私よりも死亡の連絡を優先させたでしょう。