コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ6-1

 約一時間後、喫茶店のお客が入れ替わったころあいを見計らい、O署の種田と鈴木は店を後にした。喫茶店はS駅北口の数メートル隣、店の二階と形容される階が実質上、地上高と等しい高さ。もっとも、S駅の出入り口は緩やかなスロープと階段を上って潜るのであって、本来は一・五階という言い方が正しいといえる。

 五分ほどの時間を駅に入る、あるいは出て行く人の姿をなんともなしに種田は目で追った、かつて喫煙所があった濃淡に色分けされた茶色いブロック塀に寄り添い、直立不動である。

 手間を掛ける荷物を持った人はタクシーやバスを利用している、対して軽装に一つの荷物だと足取りは極端に早いか、ゆったりのどちらか。緩慢な動作と手元の端末はセットである場合が観測では半数を超えたか、それにしても、皆情報に飢えているらしい。かく言う種田たちもその情報にすがる。不本意だ。特に彼女にとっては、拷問に近い仕打ち。記憶を書き換える機能が理解に及ばない人たちの文章や会話は非常に退屈で、自虐的で、華美、散漫で意地汚く、プライドを掲げたかと思えば、翌日は悲観的に日常の罪を語り、集客を意図的に操るのだから、手に負えない。

 サイトを調べるにあたり、特定の人種が目に留まったことを、種田は思い出す。スーツを着た二人組みがこちらをちらりと流し目、そのままつきかしてしまえばいいもの、なにやらこちらを立ち止まって窺う様子。

 ノイズ。種田は考えに引き戻る。