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不躾だった私を、どうか許してくださいませ6-2

 日記形式で書かれた過去の文章に罫線が引かれるのである。訂正や誤解を招く恐れが本人たち、書き手が主張する理由と予測されるが、見る限り訂正の労力、つまり改めて今日の文章を訂正の修正や招いた誤解への謝罪などの労力をなるべく減らすのが目的。また、時に日に何度も文章は異なるテーマで投稿される。そのため、短期的な報告の類や募集、会合の発表などは書かれた翌日にはデータが消される場合も散見され、あろうことか、彼女たちが欲しがる事件当日の日記は大よその媒体で綺麗さっぱり消されていたのだった。

 幾つか巨大なサイト運営会社というものがあるらしい、種田はその辺の事情には疎く、鈴木による知識の取得である。運営会社に事件当日のデータ消失については、ネット上で新鮮な話題だったらしい。そう、らしいのだ。つい先日にまではそれがトップニュースで扱われ、関連記事、憶測、個人見解、過去と未来や周辺事情とのこじつけ等々で蔓延していたのが、あっさり台風情報、今シーズン最大級の勢力を誇る気象の心配に世間の対象は移り変わったのだ。

 結局、運営会社に利用者を装って問いただした当日のデータ消失の対応は、ただいま検討中であり回答はもうしばらく待って欲しいとのこと、付け加える会話の終幕には今後の利用をお願いされた。どういった面持ち、態度で言えてしまえるのか、と端末を切って、振り返ったが顔が見えないという環境は人そのもの姿形をありのままに映し出すのだ、種田は妙に合点がいった。

 鈴木が小走りで階段を駆け上る。片手には事件をまとめた概要を持つ。二人の行き先はレトロな洋食屋である。