コンテナガレージ

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不躾だった私を、どうか許してくださいませ6-3

 左手のバスターミナルに続く小道そびえる時計は午後の三時二十を指していた。

「人の意見に耳を傾ける、種田にしては恐ろしく従順」対峙するなりの発言。鈴木は右手にビニール袋を下げる。おもむろに取り出す、印刷した文書は右脇に挟み、左手で肉まんを差し出した。「はい、どうせ食べる時間がないと言い出すんだったら、この際歩きながら食べてやる、これなら文句は出ないはず、だろ?」片方の眉が上がった。

「ええ、話をまとめるために四ブロックほど歩くのですから」

 二人は並んでS駅を南に下る。この通りは時計台と市役所と事件現場のブルー・ウィステリアが立ち並ぶ通りだ、彼女にとっては都合がいい。一本中の駅前通りに比べると人通りは格段に少ない。その代わり観光客が一部のブロックでひしめき合い、そのほかの建物、通り、ブロックは比較的人の顔や背中を追うわずらわしさから逃れられる。

 ここは北口、一旦駅に隣接する商業施設を大回りに除けて、高架下を潜った。空模様は店じまいを始めてしまう様子で、そろそろ夕暮れの気配が漂うか、種田は見上げた視線を信号で待つ数秒を消費する。肉まんは既に食べ終え、鈴木の消費を待つ彼女である。

「……そうだ、ブルー・ウィテリアの新情報が舞い込んだよ。どこからだと思う?」得意げな鈴木の気分をトレース。

「部長」コンビニで連絡を受けたのか。

「あのさあ、もうちょっと遊び心ってもんを、持ってくれないと、クイズに昇格しないよう」一気に残りの肉まん、二口分を口に押し込んで鈴木はせっかくの気遣いを不意にされた、そう怒りをあらわにした。ただし、本心で怒っているのでは決してない。つまりは私が答える場面を想像していた、と言える。だから、私に非はない。

「尾行されています」彼女は足元を見つめて囁く。信号が青に変わった。一斉に人が横断歩道の白線をまたぐ。