コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって4-2

 店主は、館山とホールの国見蘭の二人を同時に休憩に入れる。小川は三十分後に休憩に入るよう言い渡す、時間は各自の管理を任せてある、彼女たちが案じる懸念を僕は微塵も感じられない、という意味にも、まあ取れるだろうか。しかし、だからといって……、弁解はこの辺でしめよう、店主は明日のランチに気持ちを切り替えた。

 館山から引き継ぐディナーの仕込みを小川に任せ、店主の行動は明日のランチへと移った。

 そこへ、あろうことか、先ほど別れた鈴木が数十分も経たずに再会、顔を出した。構う気はさらさらない。緊急性は十二分に理解、しかしこちらも仕事である。わかっている、彼も仕事だということは。

「お取り込み中ですよね?」下手に出た言い方だ、彼の要望に少量の好感を持ててしまえるのは、世の女性が忘れがちな女性的な思考を基点に派生する動作の展開だろうか。几帳面に、ドアの開け閉めが意識せずとも身についている、ドアが閉る直前にやっとことで意識を離す、ドアの開け閉め、軋む通路と奏でる足音でその人物のおおよそ性質は知れてしまえる、店主である。

 出窓側のスペース、石の上でせっせとピザ生地をこねる小川安佐が粉にまみれた両手を掲げ、鈴木を出迎えた。

 店主は寸胴のスープに浮いた灰汁を取る。

「ああ、たしか女のかっこいい刑事と一緒にいた方ですよね?」小川安佐がきいた。

「僕も一応は刑事なんだけど。ま、いいや。はい、どうも日に二度も、すいません」

「えっ、いつ来たんです?ああ、そうかランチの時にですか?私全然気がつきませんでした」