白んできた、視界が白煙に奪われて、一メートル先の見通しが利かない状態である。窓を覗くが、カーテンが閉待って中の様子は見えない。ドアも施錠されている、そこで、種田な冷静に事態を把握した。
建物から煙は排出されていない、入り口ドアの裏側に発信源か……。
種田は、そっと足を殺して、プレハブの壁に張り付く。
ゆっくり死角を覗いた。もちろん視界は煙が覆う、足元を注視。今度は地面に這い蹲る、草がちくちくと痛い。建物の周囲は手入れが行き届いていたようだ、ゲートと事務所の獣道の両脇とは草の背丈が異なる。気分転換か、それとも単なる気まぐれ、気の迷いか、はたまた秋めいた時節に購入したての機材の使用はそろそろ不要であると判断を下したのか、無駄な想像がこういった緊迫した場面では時折姿をちらつかせる。まったくもって、融通の利かない頭脳だ。
足が見えた、地面すれすれは同時に呼吸のしやすさが付帯した、息を整える。
スニーカー。白と紫の紐がかすか、煙の向こうに見えた。きっちりと両足が揃っているみたいだった。動きがない。なにをしているのだ、種田は疑問の解消に、行動を即座に起こした。
「そこで何してる!警察だ」
反応は返ってこない、種田は煙を吸い込んで蒸せた。仕方ない、応援を待っていられる状況ではいのだ、種田は屈めた体で飛び出しつつ、身を起こして距離をさっと詰めた。
湧き上がる煙は椅子に座るある人物の背後、一斗缶が発信源であった。電熱器、暖房器具の上に一斗缶が、そのなかに真四角の角材が数本放り込まれている。スモークに使用されるチップだ。