コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって7-4

「人が倒れてる。今からゲートの外に運ぶ。こっちに来て、手伝って」

「登れませんよー、私にはゲートが高すぎます」

「くそっ、まったく」種田は、事務所に走った 鍵穴が塞がれていた、煙でよく見えなかったらしい。即座にドアを蹴破ろうとするも、弾かれた。びくともしない。切り替える。手近な石を窓に投げた。鍵を外側から開ける。飛び散ったガラスをなかに、袖を摘んでおとす。腕の力のみで、まずは肩と肘をサッシに置く、出っ張りに痛みを感じる余裕はない、もう片方の腕を室内に、格子に指先を引っ掛けて体を持ち上げる、同時に滑る壁をつま先で押し、上半身滑り込ませたら、そのまま体を一回転。軽快に足から先に着いた。

 壁にかかる鍵を取って、ゲートに急いだ。走る、むせる、かなり開けた視界。

「救急車、呼びましょうか?」ゲートの外で待ち構える運転手が慌てふためいて、右往左往、口元に手を当てて、きいた。

「もうとっくに呼んだ。到着は遅れる、出払ってるんだ。とにかく手を貸して、ああ、いいや、車をゲートの中に入れて、そのほうが早い」

「わ、わかりました」運転手はかしこまって敬語で応えた。

 現場を捜査する余裕と時間は皆無と言っていい、だから種田は証拠を残したまま現場を立ち去る選択に従った。

 後部座席に舞先をのせて、最寄の病院を担ぎ込んだ。

 そこは救急医療の設備が整う病院らしく、救命センターの表示を見つけ、警察手帳を見せ、早急な対処を種田は要求した。

 背もたれのないロビーに彼女は座る。日焼け用の手袋を握り締める運転手は、名前と会社名を記憶、種田は仕事に戻る許可を与えた。後日、警察に出向いてもらい調書をとるかもしれない旨を伝えた。

 間口が広くて天井が高い出入り口、搬入口というのだろう、その脇の受付に訊いた。

「廊下で端末の使用は許可されてますか?」

 小窓から愛想のいい声が聞こえる。声が先に届き、PCディスプレイを見つめる視線が遅れて向いた。ふくよかな女性が横顔から正面の中間の角度を向ける。「出入り口の付近はPHSなら大丈夫ですよ。普通の端末は外に出てもらわないと使用は控えていただく決まり。ドアを出たところに、ベンチがありますから、多少肌寒いでしょうけれど、こればっかりはね」

「そうですか」