コンテナガレージ

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ご観覧をありがとう。忘れ物をなさいませんよう、今一度座席をお確かめになって8-2

 ロッカーの上に見慣れない箱が置かれていた。プレゼントの外装、緑色と光沢のある水玉が二十センチ四方の箱を包む。リボンは赤。店主は眺めるのみに行動を留める、僕のロッカーの真上に置かれた、すなわち自分へのプレゼントと捉えるのは時期尚早、甚だ短絡的な思考といわざるを得ない。放置しておいた。それよりもランチが店主の脳内を席巻、焦ってはいない、それどこから気分は高揚、舞い上がる。どれにしようか、何を作ろうか、討論に勤しむ脳内の小人たちは各自の意見をぶつけ合う。

「店長、手ぶらですか?」小川安佐がコーヒーを手に、出入り口のドアを引き開ける、すっと風が舞い込んだ。彼女の指摘から推察するに、先ほど見かけた箱は僕への贈り物であるらしい、店主はしかし、引き返すつもりはなかった。厨房の段差を、ロッカーに近い側から踏み入れる。

「リルカさん、やっぱり直接渡さなきゃ、店長は鈍感ですから、自分への贈り物だって気がついてないんです」

「緑色の箱のこと?」サロンを腰に巻く店主が無関心に尋ねる、事実店主の体内にはびこるイメージはテイクアウトをいつまで続けるか、という提供の仕方であった。昨年はテイクアウトのお客は店内に引き込み、可能な限り屋外の人数を最小にと手段を講じた。が、適切な対処といえず改善の余地が残る。ただし、こちらは今年、アドバンテージを有する。不動産屋と外食経営の専門家に貸しを作った。簡易な設置が可能な、風雨と降雪を遮るテントのような物を提案してみよう、店主は、サロンの結び目を作り終えて、考えを一つまとめた。

 ランチのメニュー、概要は出来上がり、後は食材をあてがうのみだった、決めかねていたというのが迷い、それが店主の表現である。必要な食材を倉庫で見繕うはずだったが、どこでずれたのだろう、ああ、店主は正対する二人の従業員を眺めて、思い出す。プレゼントである。

 小川安佐は日課になりつつあるコーヒーを摂取、口を開いた、ほのか豆の香りがこちらに届いた。「店長の端末がほら、年代物の、かつてない不変最強のフォルムにどうか一矢を報うべく、私たちが立ち上がった所存ですよね、リルカさん」