コンテナガレージ

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私は猫に石を投げるでしょう1-7

 嘘だ、できるはずがない、真っ向から否定する意見に私は応えた。できないのは、取り組んでいないからいえることで、取り組んでから、まずは発言権を得られる。あなたの土俵では最高位かもしれないが、私が足を踏み入れた領域ではあなたはまだ、いいえ、一切の言葉を発する権利を剥奪されているのです。まずは自分を殺し、他者を見つめ、改善に取り組み、またそれすらも、無に返して、やっと境地、スタートラインにたどり着けると。

 笑ってやってもよかったのだ、冗談だと。けれど、蔑ろに見ないように振舞った自分を見つけるだけの力量は残っていたようで、会合の参加者は一様に思いつめた表情で、一人が帰ると続々と席を立って、最後に残されたのは、私であった。クライアントも上の空で、会計は残された私が済ませた。後日、請求書を送るように、クライアントが私に連絡したが、取り合わなかった。何かをしたという事実が私の金銭として変換されたならば、私はそこにいくらか価値を見出すかも知れないと感じたからだ。しかし、気前良く支払う男の気持ちはまったく理解に及ばなかった。私には、見栄という部分が欠損しているらしいのだ。

 流れ着いて乾燥した木の枝を拾って私は会社に体の向きを変えて戻る。枝は途中で放り投げた。

 デスクに着席、出来上がった作品を眺める。瞬間的に目に飛び込む印象と色合い。こましゃくれたデザインは取り除いた、帯の分だけ本の下部は空間をそのために用意した。あらかじめ、遣わないようにデザイン。表は裏に裏は表に、書店に並ぶ本を手に取らせるためには、好みの作家、話題の本以外にはかなり難易度が高い。よって、まずは手に取らせるために、表には一色を配した表紙を作り、タイトルと作家名は裏表紙にデザインした。単色なので気にはなるだろうし、手に取れば、ページを捲らざるを得ない、だって裏まで眺めたのだから。後は、運を天に任せる。