コンテナガレージ

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私は猫に石を投げるでしょう2-2

 意匠デザイン、新しい食器の形を提案、既存の枠に囚われない、独創性豊かな、一品を。

 陶磁器、伝統工芸品の器を作る会社の依頼である。器かぁ。しかし、なじみの薄いものは反対にアイディアが浮かぶのだ。なまじ知識を持っていたり、身近なものであったりすると、染み付いた感覚に囚われて、アイディアの捻出に時間を要してしまうのだった。皆はどうやって仕事に取り組んでいるのか、同僚には聞けなかった。だって、誰一人休憩時間におしゃべりに花を咲かせている社員は誰一人としていないのだから。少しぐらいは大胆に。休憩なのだから、私はいくつか理由を挙げることで、休憩を楽しもう、時間を有意義に使っているのだから正当化を主張、しかし、やはり仕事量に見合った働きは私の行動も無意識に抑制していて、会社内には居場所を見出せなかった。そういったときには外に出て、三十分ほど散歩をする。人の出入りは頻繁でも散歩に繰り出す人はほとんどいない、何度か見かける顔は決まって同じなのだった。

 依存した脳内をリセット。顔を叩いて、気を引き締める。身だしなみに気を遣う余裕などありはしないのだ。会社に来るための最低限の施しを肌に塗りたくって、出てきた。

 考える。ディスプレイを見つめて、横長だなぁと、率直な感想を抱く。形とは、依然として過去を継承している。椅子にしても、照明にしても、建物にしても、いくらかの決まったパターンによって、バリエーションを増やしつつ、標準的な形はいつまでも好まれる。だったら、標準的な形の正反対の方向を目指してみようか、私は考える癖がやっとついてきたようだ。これまでは、ゼロから悩んで頭は真っ白で、微かに浮かんだアイディアは寄り集めたこれまでの産物であることがほとんどだったのだ。

 器。用途を考察する。食物、料理、お米や味噌汁が主な使用目的、浅い器は煮物やお漬物、一品料理が最適か。深いと中身は見えづらい。こぼれないための器は汁物が好まれる。しかし、それだけのために器を新しく買うだろうか。食卓に並ぶためには代用品とこれまでにはない価値が必要だ。器と思いついて、私は勝手に和食を想像していたが、洋食に置き換えてみてはどうだろうか。ひらめいた。