コンテナガレージ

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選択は三択1-7

「はぐらかしは、ええ、理解しました」息を吐き、大げさに館山はいたずらっぽく、一歩前を歩いて振り返る。「店長は休憩といえば川を眺めてます、前世は河童だったりして」館山は笑顔を残して、走っていった。元気、若い時に無性に走っていたのは、風を切る快感におぼれていたからだろう。小川のような無邪気さ、それが館山が隠す本性だろう。

 田所謙二が残していったフランスの旗が店先ではためく。彼の名前が書かれた小包が届いたのだ、警察には話していない。ピザ釜と古めかしい様式の建物にフランスの国旗と入り口に吸い込まれた黒髪。

 来週のランチを考え始めた。今日までを思い出し、否定し、忘れ、反対に飛び、それもまた作られたものだと理解し、組み合わせて別の角度、ありきたり、蹴り飛ばし、一から、来週の気温と天気、体を冷やすもの、温めるもの、……響かないか。

 店にたどり着く、黒板、三品の料理、豪華に一品に絞る、想像、ドアノブ、回転、引き開けて、ベルがカラン、立ち止まり、おかえり、ただいま、家庭料理、一途な味、おにぎり・副菜・味噌汁、同意を得る、反論は上がらない、決定、遮断、来週までの宿題、舞い戻った通常。

 館山のリハビリに握る作業は最適だろう、そして小川には副菜を任せる。店長はおにぎりの具、形、個数を考えて、試作品を作り続けた。必然に物事は還る。

 試食を、味見をしても店長が太らないという話題に店を一斉に出た従業員が話していた。店長が言う。

「すべてはどこかに要因がある。何も食べていないのに、という人は何かを食べている。だって、食べていない人は食べたことを正確に覚えているんだ」

「なるほどぉ、耳が痛いです。言われてみると、食べたり、ああ、飲んだりしてますもん」小川が生活態度を振り返って言ったようだ、店長は店のドアに鍵をかけていた。

「すべては影響しあっているんだ。野生動物は太っていませんものね、それに食べ過ぎで死にはしないですからね」

 先に歩き出した、二人を追いかける小川が店長を待った。「行きますよ、店長」

「うん」信号が変わって車の騒音が途切れるとお祭りの出囃子が聞こえた。 

                                    終わり