コンテナガレージ

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手紙とは想いを伝えるディバイスである1-2

「疲れてるみたいだな、徹夜か?」

「それが昨日、家のPCが壊れてしまって。作業に没頭して、時計を見たら、外は明るいし、もう朝の四時になると空が明るくなるんですねぇ」対面の席に座って鈴木は栄養ドリンクを飲み干す。最近では、通常の清涼飲料水と同等のパッケージでかなり飲みやすく改良されているようだが、熊田はまったく手を付けずにいた。一時的な効果の後に、どっと落ち窪んだ顔でエネルギーが切れたように佇む部下たちを何度も目撃し、体力の少ない者には不向きだと感じたかだら。予測するにエネルギー消費と栄養の消化を同時に行っているのだろう。通常は消化にその力を使って、活力を得るのであるが、ドリンクは液体であり即効性の効果により、吸収が早く、飲んだ傍から活力がみなぎり、エネルギーを消火した反動は活動の落ち着きに合わせ、遅れてやってくるのだ。

「定時に帰らなかったのか?」

「久しぶりにこっちに戻って仕事を始めた友達と会ってましてね。それで帰りは深夜になって、PCを開いたら、うまく作動しなくって……」鈴木は両手を見せて、肩を竦める。「何で、PCのリカバリーのときってあんなに時間が経つのが早いんでしょうか。いやんなるぐらい、あっという間でしたよ」

「時間は平等だ。流れの速さは捉える事象がそもそも高速で動いているからじゃないのか、それを視覚から取り入れて脳が錯覚を起こす。現実がPCの速さに飲み込まれている」

「はじめて聞きました、その説は」鈴木があくびをかみ殺す。しかし、目はぐんと見開いて興味の火が輝いてる。「PCの情報処理を人間が無意識に感じ取って活発な処理を促してしまう、ということですか?」

「さあな、私は専門家ではない。ただ、高速で走る車を止まって観察するのと同じ速度で並走するのとでは対象の観測には違いが生じる」

「僕は、早めてほしくはないんですけどね。だから、休みの日にPCを触りたくはないんです。一時間なんてすぐに吹っ飛びますから」

「おはようございまーす」恰幅の良い相田が出勤。

「おはようございます」続いて、種田も顔を見せた。種田は相変わらずむすっとした表情でしかしこれが彼女の標準のスタイルである。

「あれっ?」鈴木は相田を見て、声を上げた。相田の右側面に青い浮腫。「どうしたんです、それ?喧嘩ですか?」

「刑事が喧嘩なんかするか。酔って帰ったら玄関で顔を打ったまま、……寝ていたんだよ。痛いから触るなって」