コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

手紙とは本心を伝えるデバイスである5-4

「警察の方には楽観が求めれると思いますよ。だってこんな殺人のような現実を毎回見てきているんだから。悲観に暮れたら、生きていけない」

「それはそうですね。ですが、仮に私が悲観的であっても、明日の事は考えませんよ。まだ今日が終わってもいないのに」

 社は皿を綺麗に片付けた。お茶を勢い良く、グラスを空に。「もう時間ですから」

「まだ、外には出ないでください」

「言われなくてもそうします」エレベーターに乗り込む。まだエレベーターは修復なのか、点検なのか、作業を続けていた。私が殺人を犯した、刑事はそう思っている。大胆にあのドアを開けたからだ。しかし、だけど偶然にあのドアが開くような感覚が誘った。誰もいない廊下、試してみる価値はあるように背中を押された。会議室が手前のドアとは本当に知らなかったし、もし開けていたのが手前のドアでも、私は同様に試してみる価値、その心境で挑んだ。

 到着した箱に乗り込む。しかし、箱は地下に降りていってしまう。間違えた。でも、すぐにまた上昇するだろう。

 犯人が会議室に隠れていた可能性を刑事はそれとなく示唆していた。本心で言っているのか、ちょっと神経を疑う。隠れていたとしても、私たちがいたのだから、現場を離れられないではないか。それに、刑事が現場に到着して会議室も調べたのではなかったのか。もう、記憶が曖昧だ。それに私とあの二人の過去を探ってもいた。共犯。もちろん、顔は知っている。もう一人は、いえない。別に言ってもいいが、変な誤解を生むだろうし、あっちはおそらく気がついてないだろう。もう何年も会えていないのだから。やっぱり言わないほうがいい。そうに決まってる。話せば、たちどころに私の立場は危うくなるのは必至。今日は定時で帰るんだ、娘を迎えに行かなくては。娘が待っているのだ、旦那には昨日も臨時の代役をお願いした。母親として失格だってひしひしと感じている、身にしみて、傷を負っている。だから、今日こそは、絶対に帰らなくては。

 五階で降りたらデスクに直行。社はめまぐるしく頭を回転。いつもよりも頭が回っているように思えた。それはもしかすると、曲の影響かもしれない。かかっていた曲は後押しにもなり、足を引っ張る要因でもあったが、どっちも私を掻きたてるベクトルに作用していたのかも。いまさら気づいても遅い。でも、ここは大勢の社員が働くフロア、あてがわれた一つのデスク、間仕切りもなく、前後左右に私と同等のスペースを与えられた同僚。彼らからその反力を借りてみようか、実験。

 ことのほか作業がはかどる。これはいけるかも。社ヤエは吸い込まれるよう画面を見つめて、仕事に取り掛かった。