コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

手紙とは真意を伝えるデバイスである1-5

 月が綺麗ねって言われても、天邪鬼で私は認めない。だったら太陽がねって、それでもなびかない。傾倒は拒否、ぶらぶらと揺れるのが好み。そう、いつも離れていたい。だって昼間の月がどの位置あるかなんて考えないだろう。

 いつもその大きさだ。

 太陽は位置を確かめる、今がどの時間かを。

 朝方と夕方は顕著。

 昼間だって高さを測る。

 月は、それだけで十分。

 雲に隠れても、欠けていても、小さくても月は月だ。

 真正面から愛情を伝えられると私は避けてしまう。除けたくはないけど、恥ずかしくはないのだけれど、どうにかその直線的な熱意に本心が通っていない、と捉えるのだった。自分を信じていないから、そういった返答も幾つか聞かれた。だけれど、住処を変えて移り住むヤドカリに言われたくはない、言い返したのはいつのことだろう。

 寂しいの?息が苦しいのだろうか、人恋しいのだろうか。

 どれもこれもかれもこれもいつでも今でもどいつでもあなたでも、全部がわたしだ。

 熟睡はここ数十年してない。いつも時間に追われて起きる。今日だってそうだ。しかし、それで私は救われてる。今日を生きる価値を忙しさに見出している。頼もしいではないか、体は保つだろうか。心配?そのために食事は最小限に抑えている、タバコは吸うが、アルコールは飲まない。人並みに歩き回っているし、特定の不調もない。生きているし、いつか死ぬ。それは次の瞬間かもしれない。あの死体のように。思ってもいない形で訪れるのさ。

 美弥都の思考回路に引き戻そう。こちらのほうが安定してる。更新しないが、シンプルで使いやすい。しかし、大量に容量を侵食はする。いいではないか、取り入れる情報は事件に関する事項がほとんど。

 眠りに落ちた。熊田は顎を引いて、体を守るように意識を切った。