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手紙とは事実を伝えるデバイスである8-2

「あなただけですね、犯人について聞いたのは。他の方は皆、また事情を聞きにきたのかと、半ば呆れた態度でした」

「事件に進展、そこで不足した情報を補うためにまた情報を入手しようと私を呼び出した、違いますか?」

「はっきり申し上げて進展はしてません。まだ情報を集めている段階です。ああ、社長さんの遺体は鑑識が回収しました」

「エレベーターを使ったのですか?社員に見られたかもしれませんね」玉井は社長らしく、起こりうる事態の発生と対策を自然に考える。

「まず心配いりませんよ」

「階段を使ったのですか?非常階段は災害時にしか利用できないと聞いてます」

「エレベーターの業者に頼んだのですよ。二つ目の点検に移る前に、運んでほしいものがあるって。彼らは無線機も持ってましたから、地下から六階までの出入りを封鎖し、運ばせたのです」

「彼らに見られるほうが一大事、外部の人間だわ」

「メンテナンスはビルが壊されずに利用を続けるまで、契約は続きますので、そういった方面のことを匂わせておけば、現場の職員に誰かが、漏らした情報によって著しく会社の名誉に傷がついた。想像は簡単です」熊田は鑑識を見送る前に呼び止めた作業員に頼んでいたのだった。

「話は変わりますが」熊田は本題に切り込む。「社さんとあなたは姉妹だと伺いましたが、事実でしょうか?」

「彼女から聞いたんですか?」真意を確かめる、彼女の瞳が光った。

「ええ、先ほど」

「隠してもいずれは調べがつく。そうですよ、社ヤエは私の姉です」

「では、社長との血縁関係はご存知ですか?」

「真島社長とですか?」

「はい、社さんは社長に血の繋がらない血縁関係を言い渡されたそうです。あなた方の父親が養子に社長の真島マリを迎え、その後父親は亡くなった」

「父が養子を?」玉井は前のめり、語尾を上げる。「知りません、初めて聞きました」

「家族の交流は、あまり密接に取られてはいなかったのですか?」

「母は私が高校生の時に亡くなって、それ以降は大学進学後に家を出ましたから、たまに帰ったけど、就職をして一人暮らしをはじめる時にはもう、連絡も取り合ってません。姉とはたまに年に一回は生存の確認をする程度、顔を会わせて騒ぐ気質は遺伝的に備わってなかったのでしょう」