コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応9-2

「私にですか?」

「従業員はほかにいらっしゃいますか?」熊田は彼女が顔を出した場所に視線を送る。そちらに人の気配、摩擦音や金属音が聞こえた。

「私を含めて二人です。この後、接客のバイトが二人来ますけど……」目をぱちくり、瞬きの回数は緊張が高まった証拠か、熊田は彼女の癖を読み取る。彼女は斜め後ろの種田が私よりも気になる様子で、だいたいの私への視線の停滞時間は長く、種田には短く、何度も回数が多い。

「こちらの女性がお店に来たと思うのですが、見覚えがあるでしょうか?」

 女性は手渡された写真をみつめる。「わからないですね。ここへ来たのですか?」

「六月の二十三日です」

「平日です」種田が補足する。

 一瞬種田に今度は顔を傾けて彼女はものめずらしい女性刑事をみた。

「私、営業中はほとんど厨房にいるから、お客さんの顔はあまり覚えていなくて。十時半まで待って下れば、接客担当の子が出勤してきます」

「では、こちらで待たせてもらってもよろしいですか?」

「どうぞ」彼女の頬が緩み、目がなくなるほど細く線を描いた。彼女は順番待ち用の椅子を熊田たちに勧めて、厨房に消えた。熊田はすぐに座らずに店内、飲食スペースを覗いてみる。沖縄の家を連想した。段差の上に畳が引かれている。梁が天井を渡り、二部屋が地続き、改装前は襖が部屋を仕切っていたと推測できる。つま先を返すと、石像にされた種田が席についていた。熊田も座る。会話は特に交わされない。二人の仲は良好といえる。何も話さない事が、二人が討論もせずに導いた結論。