コンテナガレージ

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店長はアイス  過剰反応6-4

「直接死体を確かめたいんだ」

「とくに不審な点はない、と捜査を引き渡した隣の課の奴らが言ってませんでしたか?」

「うん。ただ、まじかにじっくりと腰をすえての観察はできなかった。運ばれていく時だったからな」

「あの、相田さんに見てもらえばいいんじゃないんですか?ほら、だって、二班に分かれているのは捜査を円滑に進めためでしょう?」

「相田は留守番だ」

「だって、デスクを離れたとしてもほんの数十分ですよ」

「一人ぐらいに事件と距離を置いている人間が欲しいのさ。凝り固まった見方では捜査が偏る、その点相田なら、はっきりと間違いを指摘するだろう」入れ込んだ相田の強いベクトルを鈴木と種田は知らない。

「そういう役目だったんですね。相田さんの留守番って」鈴木が納得し終話。

 運転中は無言が許される。熊田は署まで黙っていた。特に鈴木はなにかにつけて話題を振るが、そっけない返事に気を悪くしたのか、彼も口を閉ざした。新車特有の匂いはすっかり消え去る、代わりに煙草のにおいが染み付く。種田は鈴木の口が閉じると会話を妨げる風を車内に取り入れた。署に帰り、鑑識課を訪問する。鑑識の主任、神がコーヒーを受け取っていた。挨拶もそこそこに被害者の詳細を彼に尋ねた。室内中央の白いテーブルに熊田たちが座る。ファイルを脇に抱える神はじらすようにコーヒーを含み、時間をかけて腰を下ろす。髪の長い女性署員が熊田たちにもコーヒーを差し出す。彼女の顔に、私はお茶汲みではない、毅然とした主張を見て取る。気の強そうなきりっとした眉と整った目鼻立ちのせいだろうか。熊田は神の言葉を待った。彼が頭を掻いたら話し始めるきっかけ、癖を知れば余計な心労からは回避できる。

 すると、火をつけない煙草を口にくわえた神が後頭部を掻いて、しわがれた声を出した。

「目立った外傷は右側頭部の損傷。他はいたって綺麗だ。妊娠はしていない。脳内に溢れた血が圧迫を引き起こし死に至った。傷を負ってしばらくは生きていた、ベンチに座っていたのはそこで休んでいたのかもしれないなあ」

 神の正面に座った熊田が聞く。「死亡推定時刻は?」

「午前三時から五時にかけて」神の指先が落ち着かない。コーヒーを運んだ女性署員はデスクでPCを操作する。

「現場まで電車で来たとは考えづらいか……」熊田たちは被害者の車はマンションの駐車場を確認した。車での移動も消去。

「自宅と仕事場も正反対の位置です」鈴木が呟く。鈴木はあまり神が得意ではない。恐ろしいよりも不気味らしい。携帯する威圧感は寄せ付けないためのそれか気恥ずかしさか、わからないそうなのだ。もちろん神は気恥ずかしいのだ、熊田は思う。