コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

自作小説-鋭敏なのは鈍角だから

パート2-3

男は、乗務員を呼び、飲み物を注文した。僕も面倒な視線に応えて同じものを告げる。「ご自宅の裏に二階建ての家があります。そちらの庭、芝生の下に地下へ通じるハッチから裏の家に出入りができるよう、準備は整えてあります」今回が本格的な訪問で、一度1カ…

パート2-2

「君は眠らないのかい?」ひとつ間をおいた席から声がかかった。男性、髪が長く、ロッカーみたいにひげを生やしてる。年齢は二十代から三十代といったところ、服装はカジュアルで、長い足を窮屈そうに折りたたんで、空いた席のほうへ足を流すように座ってい…

パート2-1

夢うつつの中にあっても頭はぐるぐる回転。微かなまぶたの開きから送信される情報を取り入れては、捨て去り、思考に集中を促す、呼び水。右側の映像を構築してみるが、上手く再現ができない。欠落部分に必要とされる情報、緊急で重要度の高い、思い起こす記…

パート1-5

外はすでに日が落ちて、ものの数分で闇が支配する時刻だ。黄色のバスにエンジンがかかり、のっそりと学校の敷地を優雅に周囲を威嚇するように走り出した。バスの停車時には他の車は停止する規則があって、僕の捉え方もまんざら嘘でもないのだ。バスの赤いラ…

パート1-4

僕は首を振った。帰りの車内で考えることがなくなるではないか。考えから離れて、突き当りを左に、持ち物検査のゲートを通る。雇われている警備員の男性に鞄を渡す。中を見てもいいかと、一応こちらに許可を取るが、断ったとしてもどうせ調べるのだから、い…

パート1-3

「キャプテンフックにでもなったつもりかよ」右から声が聞こえた。体勢を四十五度右に回転させる。小太りなクラスメイトが無駄に床を蹴って天井を目指してる。 「体が大きいっていうのと、太っているっていうのは違うらしい。動けるなんとかは、体のいい表向…

パート1-2

「多分、渋滞で遅れているんだと思います。いつものことです」 「ダイヤモンドレーンはお迎えの時には通れないのか、送り迎えに通行料を払えるのは特権階級だけですしね。あらいやだ、私としたことが。ごめんなさいね、あなたの家庭を侮辱したのではありませ…

パート1-1

地続きの教室を潜る。背の低い机、椅子、黒板、横文字。室内は奇抜な原色に施されて情緒の欠片もない。色という表現を前もって諦めたスタイルらしい。その陽気さは、もしかするとこういった細部の感覚に要因が隠れている、と思う。席に着く。統一感のない皆…