アイラがバラードをもうじき歌いきる。
余韻。
酔いしれて長くてもいけない、恥ずかしがって短命ではもっと失礼。
そろそろ。
言葉を切るまで、二十二秒。
染み付いた脳内のカウントが始まった。手がけたあらゆる楽曲を忘れられるものだろうか、人は、大多数は一度聞いて忘れてしまえるらしい、憧れの機能。それなら、節操なく隣の庭に憧れを抱くのも無理はないのかも。
繰り返しのフレーズが二回目に突入、十五秒。
気にかけた人物の頭部がカクカク、ゆらゆら、あるときは強靭に、そのまたあるときは軽快に飛び跳ねる。
前へ、前、アイラに迫る。十秒。
迫る、刑事たちが距離を詰める。場違いなスーツ、ジャケットは脱いだらしい。ネクタイが肩に乗っかる。八。
全体を見つめる視線移動をなるべく控えめに。五。
歌い終わるぞ。誰に向けた合図か、しかし曲の構成上、呼びかける内容だから仕方ない、行動を誘発したのは私。四。
飛び上がってしまえ、出発点へ帰還せよと過去が手を振る。三。
突き抜けてしまえ、信念に従い進めよと未来が手招き。ニ。
見つめ返しなさい、見つめた過去を 見つめられなさい、願った未来に。一。
ゼロ。見せてみろ、私ではない、あなたを。