コンテナガレージ

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焼きそばの日5-3

「即答はできない。僕は作らない方向で考えを進めてきた。君は休憩時間を削ってメニュー開発に夢中になった。その努力は買う。だけど、今日も味付けの単純な調味料の取り違えで大幅な時間ロスを発生させた。ミスは当然に僕は自分も含めてすべてに寛容でありたいと思う、完璧な人間はいないからね。ただし、即座に要因が思い当たってしまうと、許容はできても、信頼は薄れる。改善の余地が見られないのであればね」

「メニュー開発は、終わりました。休憩はこれからはしっかり取ります」

「では、開発したメニューに僕がゴーサインを出さなかったら、まだ同じく開発を続けるの?」

「はい、休憩を取りつつですけど」

 店長が半ば館山の申し出に折れた形で、会話は流れた。鼻歌を陽気に奏でる小川が休憩に入りますと、宣言をしたためであった。誰からも返答を貰えなかった小川は寂しそうに厨房を出て、私のほうに駆け寄った。耳元で休憩に入ると宣言する。いってらっしゃい、その言葉を言ってもらいたいがための、休憩の挨拶。私の送り出しを聞いたら、跳ねるようにコックコートを脱いだ小川がドアのベルを鳴らした。